報告書


X月△日

今日から佐藤千春の監視する事になった。副長たちは彼女が怪しいと言うだけで、その何がどう怪しいのかを調べろと無茶振りをする。怪しいどころかどう見ても一般人だ。これってもしかして副長のただの趣味なんじゃないかと思い始める。まさか、副長までストー

X月▲日

彼女は怪しい。誰がなんと言おうと怪しい。別に副長にボコボコにされて脅されたとかではなく。決して昨日報告書を書いてるのを見つかってボコボコにされて脅されたわけではなく。彼女は怪しい。
佐藤千春という人の記録は、歌舞伎町には存在しなかった。戦争孤児や攘夷浪士による争いに巻き込まれたとか事件事故やあらゆる物を調べたけど、彼女の存在を示すものは見つからなかった。彼女はどこから来たのだろう。

X月☆日

彼女は甘味処「向日葵」で働いてる。聞き上手の看板娘として評判らしい。暫く観察して気づいた事は、彼女はあまり自分の事を話したがらないようだ。その分人の話をニコニコと聞いてくれるので人気になったそう。因みに「向日葵」はみたらし団子が絶品でよく沖田隊長がサボりにきている。たまに持って帰る激辛団子の元はこの店らしい。

X月#日

彼女は時々、不安げな顔をする。その表情がどこか引っかかる。まるで迷い子のような、小さい子供が泣くのを必死に我慢するような。そんな顔をする。誰かが話しかければパッと表情を明るくさせて笑うのに、その代わり様が痛々しくて見てられなかった。
因みに今日も沖田隊長はサボりにきていた。その日の夜、副長が団子を食べて火を吹いていた。学習能力ないな、この人と思った。

X月★日

彼女の唯一の知り合いは、どうも万事屋の旦那らしい。聞き込み調査を続ければ誰も彼女の出身地や過去を知る者は居なかったけれど、そもそも彼女をこの店に紹介したのは旦那らしかった。旦那の事も以前調べた事があるけど、旦那が笑いかける相手なら悪い人ではないのでは、と思う。
そういえば沖田隊長と旦那が副長に対する悪口で盛り上がってた。千春さんは苦笑してけどあのマヨネーズはトラウマですと言った目が遠くを見ていて気の毒だった。

X月●日

今日初めて彼女と接触した。人がこっそり仕事を全うしていたというのに沖田隊長に見つかり無理やり彼女の前に引きずりだされた。あの人俺の仕事内容知ってるはずなのに…。
適当にここの団子屋のファンなんですと言うと彼女はふわりと笑って「ありがとうございます」と言った。甘い匂いがして、ドキドキした。旦那からする吐きそうな甘い匂いじゃない。勿論加齢臭もしない。天使はここに居たのだと知った。


X月$日

今日で監察も一週間になる。佐藤千春に関する情報は、相変わらず何もない。けれど客や旦那が取る態度、彼女が笑うその表情に、怪しいものはないと思う。何故なら彼女は本当に一般人だからだ。経歴こそ不詳だけど仕草や動作、反射神経何をとってもそこらの町娘と代わりない。ただの女の子だった。だからこそ、彼女が時々見せる不安定な表情が心を騒つかせて目が離れなくなるのかもしれない。
願わくば、彼女がいつか心から笑える日が来ればいいと思う。迷子みたいな彼女が、帰りたいと思える場所に帰れるよう警察としてこれからも頑張りたいと思いました。






「作文ンンンンン!!!???」

Azalea