03


「お前と新零ちゃんの結婚について触れられてんの久しぶりに見たぜ」
「・・・・あの人、来たばっかりだからな」
「いや、しかし俺もあの時は冗談じゃないかと耳を疑ったぜ」
「・・・・・」
「だってあのトップアイドルが、メディア嫌いのお前と一体どこで出会うんだよって思うだろ?!」
「・・・・・」

一通りの話しは、同期の好で無理やり聞いたが、それでもやはり聞いたときは冗談だと思った。ラジオの仕事もしていた自分は、彼女と仕事上の接点があった。ゲストとして出てもらったことだってあった。だが、メディア嫌いのイレイザーが、どこをどうやったら藍川ニーナと話す機会があるんだ。もう何度もイレイザーに言った、今でも信じられずに酒を飲むと聞いちまう。あいつから返ってくる解答は「偶然」と「俺が会ったのは藍川じゃなくて、愛繋だ」だ。愛繋ってのは新零ちゃんの旧姓だ。だからなんだ、プライベートで会ったからだと言いたいのか、詳しくは知らない。そんなことを思っているうちに、弁当を食べ終わったのかイレイザーが立ちあがった。いつものことだ。食べ終わると、新零ちゃんのデスクに弁当箱を置きに行く。帰るのが彼女の方が早いからだ。帰らない日もあるくらいだしな。

「毎度毎度見せつけてくれるぜ、イレイザーヘッド」
「じゃぁ、お前も結婚してみろ」
「お前は絶対、結婚は合理性に欠けるとか言ってしないと思ってたんだがな!」
「他の女ならそうかもな」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

昼間からさりげなく惚気るのはやめてほしい

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