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「緑谷くん、こんにちは」
「あ、はい、こんにちは」
「怖い?相澤先生に告げ口とかしないから安心して」
「そういうわけじゃないです・・・あの、その服」
「服?あぁ、つなぎのままだったからか。さっきまでラボで作業してたから」
「そうだったんですね。あの、新零先生の個性って」
「繋だよ。繋ぐわけじゃなくて、繋がっているものが見えるっていうのかな?具体的に言うと、絡まった電気コードがあるとして、どのプラグがどれに繋がってるか、すぐわかるって感じ」
「なるほど・・・」
「実際には、電気回路だったり配線されたものの断線箇所だったり接触不良だったりがわかるから、サポート科の子の作品の不具合を調べるの。もちろん、自分で気づくことも、あの子たちにとって大事なことだけど、今の時期は、不具合のパターンを知るのも大事なことだから」
「・・・・・」
「あれ、びっくりしてる?」
「てっきり、芸能向きの個性だって思ってて・・・すみません」
「・・うん。こればっかりは、違うんだよ。でも、君が気にすることじゃない。まぁ、現役時代に色々メディアと揉めたからね」

少しだけ新零先生の顔が曇った。曲やタイアップは知っていても当時の芸能ニュースまでは覚えていない

「必ずしも個性が自分の人生のメインになるとは限らないと、私は思うよ。今でこそ個性で仕事をしているけど、世の中そうじゃない人はたくさんいる」
「・・・・・」
「個性が重視される社会だとしても、そうじゃない選択肢だってある。君はヒーロー科だから、その個性を盛大に発揮して人を助けるのが仕事になるだろうけど」
「はい」
「もう、そんな暗い顔しないで!!」
「新零先生は、個性なしでトップアイドルになったんですか?」
「アイドルになりたかったわけじゃなくてね、直感の個性を持った当時のマネージャーにスカウトされたの」
「スカウト?!」
「私は当たるって、トップアイドルになれるって。そこからは、ひたすら練習の毎日だったよ」
「そうだったんですね・・・なんかすごいな」
「人生色々でしょ?何がどう動くかわからない」
「はい、それはよくわかります!!」

それはよくわかる。無個性だった自分が、偶然にもオールマイトに出会い、今、ここにいるのだ。新零先生も誰かに出会うことで人生が大きく変わったんだ。でも、どうして引退してしまったんだろう。

「緑谷少年、ここにいたのか」
「オールマイト!」
「新零くんと一緒だったのか」
「はい!」

あああ・・・・オールマイトと藍川ニーナが並んでる!!
新零先生、引退して結婚もしてるのに全然当時のイメージと変わってないんだなぁ。懐かしいなぁ・・・小学校のころ2人のタイアップがすごく好きだった。
「じゃぁ、私はこれで」と手を振って歩いて行った新零先生を2人で見送った。

「新零先生、相澤先生と結婚されてるんですよね」
「あぁ!私も驚いたよ!!」

野暮な話、どこでどうやったらトップアイドルの藍川ニーナとメディア嫌いのイレイザーヘッドが出会うんだろうか。

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