07

新学期が始まり、ばたばたと忙しかったからか疲れがたまっていたのだろう。起きた時にはすでにお昼を周っていた。今日は出勤日ではないため問題はない。消太さんも私が疲れていると見越して起こさずに出て行ったのだろう。

15歳の時アイドルとしてメジャーデビュー。7年後の22歳で引退した。アイドルとはいえ、歌手活動がメインだったけれど20歳を過ぎるころには踊って歌っての数時間のライブができるほどの体力はなくなってきていた。もちろん歌手として続けることはできたかもしれないが、心境の変化もあって引退することにした。
日常生活に支障をきたすほどではないが、同年齢の人に比べて体力がない。本来なら見た目通りの健康体のはずだが、過去に受けた臓器への負荷が影響しているため体が疲れやすく、無理をすれば倒れる。リカバリーガールにも少しずつお世話になっているが、全回復したら体力使い切って逆に死ぬと言われた。

昼食を終えて、部屋の掃除を終え一息ついた時だった。
寝室に置きっぱなしだったスマホが音を立てた。






まぁ、今更だ。
これだけの怪我をしながら命に別状がないのなら運がいい。彼が背負っている肩書はそういう可能性があることは分かっている。それが自分に降りかかる可能性もわかったうえで一緒にいる。

「お疲れ様、相澤先生」

顔にかかっている髪を避けても包帯だらけでよく見えない。眼の後遺症が軽いといいのだけれど、こればかりは彼が起きてみないことには確認できない。

「無事で良かった」

レスキュー訓練中、敵の襲撃があったこと。消太さんが重傷で病院に運ばれたこと。それが電話の内容だった。こうして来てみれば、すでに処置は終わっており、体力がある程度戻ったところでリカバリーガールに診てもらうことになるのだろう。

「新零」
「消太さん、いつも以上に言葉が聞き取れない」
「・・・・・」
「今、起きた?」
「あぁ」
「薬が切れるまでは眼は開けちゃダメだって」
「おう」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「おかえり、消太さん。・・無事でよかった」
「ただいま・・・・・心配かけたな」
「今更です」
「ここ嫌いだろ。俺は平気だから帰っていい」
「消太さん、私の心配ばっかりしなくていいよ」
「・・・自分の嫁を大事にして何が悪い」
「自分の旦那の足手まといになりたくない」
「思ったことねぇよ」
「じゃぁ、自分の心配もっとして」
「お前がしてくれんだから、十分だろ」
「・・・・・・」
「泣くのは俺が生きてるときにしろよ」
「・・・・別に泣いてない」
「そんな声じゃ、説得力がないな」



声を聞いたら、泣きたくなった

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