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“心配してもらえるって、その人に必要とされてるってことでしょ?”と言ったのは新零だった

涙声で少し怒っているが、それが自分を心配しているからで、彼女が安心したからだ。これが初めてではない。職業柄こういったことは想定内、彼女自身も一緒になるときに“わかってる”とそう言った。
いつまでも、めそめそするような女じゃないが、どうせ泣くなら自分が生きている間だけにしてほしい。

「両腕粉砕骨折ですよ、どうするんですか」
「・・・・・・」
「トイレとかお風呂とか、食事も・・食事はゼリーだからいいか・・・」
「・・・・・・」
「足が無事なのが幸いですけど」
「・・・・・・」
「今日は一晩入院して、ゆっくり寝てください」
「おう」
「では、帰ります」

少しだけ髪に触れたのは、確認するためだろう
扉の閉まる音が聞こえ、足音が遠ざかった。まったく潔い。ここにいても何もすることがないのなら、その時間で他にすべきことがあると分かっている。俺がいてほしいとでも言えばそうするだろうが、そんなつもりもない。声を聞けただけで十分だ。

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