「ここがMs.の部屋になる」

地下牢教室から繋がる部屋を増設していただいて、私はスネイプ先生と一緒に新しい部屋を覗いていました。

部屋にはまだ何も置かれていません。部屋は新築の家のような独特な木の香りがしていました。
スネイプ先生も部屋の中をちらりと見てから、私に視線を向けました。

「ゆくゆくはMs.の研究室になるのだからそのつもりで」
「私の研究室…!」

私は表情を輝かせて改めて部屋を見渡します。研究室という響きはとても素晴らしくて、私は頬を緩ませます。
地下にあるこのお部屋ですが、魔法のかかった窓がついており、部屋はとても明るくなっていました。

どこに何を置こうかと悩む私は、にっこりと笑みを浮かべながら隣のスネイプ先生を見上げました。

「週末、お暇でしたら一緒に家具を見に行きませんか?」
「浮かれているようで」

どこか呆れたような声を出しつつも、微かに微笑んでいるスネイプ先生。
先生は空っぽの部屋に背を向けて、地下牢教室に戻ってしまいます。私も慌てて追いかけていきます。

「研究室など、結局は本に埋もれる」
「本は好きですけれど、先生のお部屋みたいにはしませんから」
「さて、それもいつまで続くか」

鼻で笑いながら肩を竦める先生に、私は頬を膨らまします。先生のお部屋は本棚に溢れる程の本があるのです。私はもっとお花とかを置くスペース等も確保したいのです。
部屋のレイアウトを考えながら、ふと思いついたことがあって私はスネイプ先生の顔をちらりと見ます。

「スネイプ先生の、」

考えつつ声をかけると、スネイプ先生はすぐに私に視線を移してくださいました。私は言葉を続けます。

「スネイプ先生のお部屋にある本棚を、ひとつだけ私の部屋に移動させません?」
「何故?」

問いかけてくるスネイプ先生に私は小さく微笑みかけました。思いついたらそれはとってもいい案だと思えたのです。

「本棚を移動させた分で、もうひと回り大きなベッドを買いません?
 今のベッドはやっぱり2人で寝るのには少し小さいじゃないですか」
「……………」

スネイプ先生は私の言葉に深く黙り込みます。
今使っているベッドは元々スネイプ先生が眠っていたベッドなので、私が一緒に入るととっても窮屈なのです。
くっついて眠れるのは良いのですが、窮屈な姿勢で眠るスネイプ先生が大変そうなのです。

そのスネイプ先生は私の言葉にそっぽを向いて、些か口早に言い切ります。

「………自室を得たのだからもう1人で寝たまえ」
「えー! 嫌ですよー! 一緒がいいですー」

顔を覗き込みながらそう言うとスネイプ先生は私と視線を合わせないままぺしりと私の頭を叩きました。頭を抑えて頬を膨らまします。

「痛いです」
「全く君は…」

ちらりとスネイプ先生を見上げると、耳まで真っ赤にさせていることに気が付いて、私は胸元あたりが愛おしさにきゅーとなるのを感じます。
きゅうと胸元を抑えてから、私は微笑みながら先生の腕に自分の腕を絡めます。

「スネイプ先生のお部屋も一緒に模様替えですね」
「……Ms.も手伝いたまえ。君が置いてるものもあるだろう」
「そんなにいっぱいはないですー」

呑気な言い合いをしながら、スネイプ先生の自室に入り、2人で杖を振るいます。
本棚を移動させるつもりで本の整理から始める先生と、ベッドを変えるつもりでベッド周りのお掃除をする私。

今週末はきっと2人で家具を見に行くことになるでしょう。



(新しいお部屋)


prev  next

- 273 / 281 -
back