それはまだしらたまがアナグラ内に慣れていない時。
「………また迷ってしまいました」
しらたまはよく迷子になる子だった。
「そういえばここは何階なんでしょう」
それすらわかっていない様子のしらたまが、ただふらふらと自室を目指す。
自室からエントランス、エントランスから自室は迷わなくなったのだが、今回みたいに博士に呼ばれたりすると、すぐに迷子になってしまう。
どの階も作りが同じなのが悪いのだ。と、しらたまはひとりごちる。彼女は溜息をつきながら再び適当に歩きだした。
「…うん、こっちでしょうか」
「どこいく」
「そ、ソーマさん」
また何となく歩き出したしらたまを引き止めたのはソーマだった。
しらたまは少し照れたように愛想笑いをしてから、小さな声で「迷子になってしまって…」と呟く。
ソーマは溜め息をついてから、右側を指さした。しらたまは首を傾げる。
「そこを曲がればエレベーターだ」
「! ありがとうございます! エレベーターまで行けばわかります!」
しらたまはにぱと笑ったあとソーマに勢いよく頭を下げた。
自信満々に進みはじめたしらたまをソーマがまた止めた。
「馬鹿、逆だ逆。あっち」
「………てへぺろ」
(アナグラ)
だってここ、凄く広いんです!