「俺たちも行くか」
「うん!早くポヨモンを休ませてあげたい!」
「そうだな。ミミちゃんじゃないが、風呂があるなら入りたいし」

 
 様子をうかがっていたアグモンが首を傾げたのと同じタイミングで、栞も眉をぎゅ、と寄せた。


「あれ…?」
「…やっぱり…違う」
「どうしたんだ、アグモン、栞」
「コロモンの匂いはするんだ、でも、ここは…」
「…コロモンじゃ、ない」
「え!?」
「はやく、ミミちゃん追いかけないと…!」

「キャッー!!」


 ミミの悲鳴が聞こえたのは、栞がそう言った時だった。子供たちの心臓が、ひやりと凍り付いた。すぐに崖をおりていく。


「ミミーッ!」


 栞たちがその場についた時、パルモンが地面に尻餅をついていた。あたりを見回して、栞は目を見開いた。
 コロモンの気配は確かにした。しかし、現在栞たちの目の前にいるのは、コロモンではなく弱い者いじめが大好きなパグモンだった。無意識に胸のあたりをまさぐり、ぎゅっと掴む。


「こ、ここはコロモンの村じゃなかったのか!?」
「さっきの栞やアグモンの反応を見てみても、そう、みたいね…」

「きゃあっっ!」

「ミミちゃんの声…!」
「どっちからだ!?」
「…あそこだ!」


 再び響いた少女の絹をつんざくような叫び声に、子供たちは一斉に声の出所を探し、太一がそこを見つけると、一目散に駆けていく。そのあとを再び子供たちは追った。
 人間の子供でも十分な大きさの家屋は、ピョコモンの村の時とは大違いだった。まるで人間でも住んでいるのかと錯覚させるのはデビモンの城の時と同じ。


「あ!あそこにミミちゃんの帽子が!」


 空がその帽子を取り、「やっぱりミミちゃんのだわ」と言うと、今度は丈がミミの身につけていたバッグを見つけた。


「そうですよ!ミミさんのに間違いありません!」
「よし、ここだな!」


 太一はいきおいよく先を進んだ。そのあとを続くのは光子郎だった。二人を追いかけようとした時、栞の目にとあるものが飛び込んできた。


「…空、これ…!」
「え?…あっ! ちょっと、ちょっと待って太一!開けちゃだめ!」


 しかし太一には空の声が届かず、危険なことにあっているであろうミミを助けるのに必死だった。太一は急いで扉を開け、そして目の前の光景にすぐに固まった。隣の光子郎も同じである。そして気楽に入浴していたミミが気づいた瞬間、彼らの顔には洗面器が投げつけられていた。


「あーらら…」
「……」
「だからダメって言ったのに…」


 顔を赤く染めた栞の横で、空はため息を付いた。
 無事ミミは仲間内に戻り、夜はどんどんと更けた。何故だかは知らないが、パグモンの好意なのか、彼らはご馳走をいただけることになり、泊まらせてもらえることにもなった。その夜は小さなパーティさえ開かれた。 
 イヴモンは警戒心を解くのをやめなかった。元来釣り上がった瞳を細め、いつ何が起きてもいいようにパグモンを鋭い眼差しで見据える。…栞を守るためには、仕方ないことだった。ここはファイル島ではない。ここはサーバ大陸だ。彼女を狙うものは、まだまだたくさんいるということだ。


「ようこそ、ハイハイ、ようこそォ!」
「ハイここはパグモンの村!」


 機嫌良くあるパグモンが歌い出したら、それに釣られ他のパグモンは踊り出した。
 ご馳走の目の前に座らされた子供たちは、以前の前科があるため、なかなか料理には手を出せずにいた。

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