「ねえ、ここまで来たのはいいけど、光子郎くんがいないとどこが隠し通路なのか分からないわよ?」
「…そう、だよな。どうするか…」
「その…横。そこに隠し通路。その通路を道なりに行くと、フェンスに突き当たる。たぶん、そこにいるよ」
「…。何で分かるんだ」
「…『守人』だから?」


 何か言いた気に口を開けて、ヤマトは己の中に何もないことを悟ると、分かったと重々しく呟いた。


「栞とタケル、ミミちゃんはここで待っていてくれ。何かあったら直ぐに逃げろ」
「私も行くわ!」
「いや、何かあった時のためにここにいてほしい」
「でも一人じゃ危険よ、ヤマトさん!」
「一つ、提案あるんだけど、いいかな」


 口をはさんだのは、絶えず笑みを浮かべている栞だった。違和感は消えないまま、ヤマトは聞き返す。


「提案…?」
「パルモンをトゲモンに進化させて、ヤマトくんと一緒に行かせたらどうかな?」
「けどそうしたらここで何か合った時に!」
「『私』がいるよ。彼等は『私』に手出しはできない。出来たとしても、『私』はそれを許さない。…ね?」


 まるで誘導されているようだ、とヤマトは思った。しかし否応なしに笑顔で言われれば、彼にはもう頷くという選択肢しか残されていなかった。


「じゃあ、…頼むよ、ミミちゃん」
「分かってるわ、…パルモン!」
「ええ、ミミ!パルモン進化ァ―――トゲモン!!」
「ガブモン進化!―――ガルルモン!! ヤマト、俺の上に乗ってくれ!」
「ああ!…三人とも気をつけろよ」
「お兄ちゃんも、気をつけてね!」


 タケルの頭を撫で、一通りの道筋を頭の中で思い浮かべ、ヤマトの背中はピラミッドの中へと消えて行った。


「…ここで待ってて平気なのかしら」
「エテモンは中にいる。ガジモンたちも、おそらく。だから、大丈夫だと思うよ」
「強いんだよね…?お兄ちゃんたち、大丈夫かな?」
「エテモンの実力は確かに侮れない。完全体に立ち向かうには、同じように完全体が必要だと思うけど」
「…どうしよう。死んじゃったり、しないよね…?」


 涙を零しそうになるタケルの瞳に手を置いて、1,2度ゆっくり撫でた。以前とは違い冷たい指先にタケルの肩は跳ね上がったが、栞の瞳はそれを感じさせないくらい暖かかったから、対して気に留めなかった。


「今、合流したよ」
「え?本当!?大丈夫なの!?」
「そこまでは何とも言えないかな……、空…?」


 見えるビジョンの中に、1人だけ子供が欠けていた。

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