057 求めよ、さらば与えられん




「…く!」


 突然の光に、ナノモンは片方の目を瞑った。この光を煩わしいと思いながら、彼はこの光を昔から知っているような気がした。


「……ト」


 この光、ずっと求めていたような気さえ。
 光は眩いくらいに灯っていたが、太一たちに視覚障害を起こさせるということはなかった。太一はナノモンが光に囚われているその隙に、その手からするりと紋章とタグを離した。空はきっと受け取ってくれる。アイコンタクトを取れば、空はこくりと頷いて、しっかりとタグと紋章を受け取った。


「ピヨモン!!」
「ええ、空!!ピヨモン進化ァ―――バードラモン!!」


 大きくなった身体で彼女を縛っていた鎖を断ち切り、大きく翼をはためかせ、空と太一、栞を捕まえて飛び立った。
 ナノモンは、未だ絶えぬ光を見つめ、ほんの小さな声で「しまった」と呟いた。本当にそう思っていたのかは、彼のみぞ知る話であった。


★ ★ ★




「太一さん!空さん!栞さん!」
「栞!!」


 イヴモンは一目散に彼女の元まで駆けつけた。意識を失っていたり、外傷が目立つというわけではなかった。ただ、彼女は絶えぬ光を放ち続けていた。


「とりあえず、今は逃げるぞ!!」
「はいっ!」


 栞は、空を見つめた。視界が段々とうるんでいくを感じる。


「…本当に、良かった…」
「ごめんね…」
「心配、したんだよ…」
「本当に、ごめんね」


 空は、栞の手をしっかりと握りしめた。暖かさを求めあうように、友達としての絆を確かめるように強く。
 もはや静かに行動する意味すらなくて、グレイモンとカブテリモンとバードラモンの必殺技が組み合わさった大きな衝撃でピラミッドの一部が崩壊した。
 眩い太陽の光に照らされ、空は大きく子供たちに手を振った。外で待機しながら囮になってくれていた子供たちは一様に笑みを浮かべ、彼らのもとへと駆け寄った。

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