Sleep Time


振る舞い


ハンター試験も二次試験まで終わり、#name#たちは飛行船でゆっくり体を休めていた。
ゴンとキルアはまだ体力が余っているらしく、これから船内を探索するとのこと。
さすがにこれまでの試験でかなりの体力を使い果たしていたクラピカとレオリオは、既にグッタリとしていたため部屋で休むことに。

そしてこの仲間の中で唯一の女子、#name#はというと彼女はゴンやキルアと一緒に居るわけでもなく、かといってクラピカやレオリオのように部屋で休むわけでもなく、ある場所へと歩みを進めた。




ーーー…
ーーーー…
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船内を歩き続け、#name#はある部屋の前で立ち止まった。
数秒ほど豪華な扉を見つめ、そして一度だけ深呼吸をしてその扉を軽く叩く。
扉の向こう側から返事があり、それを聞いた#name#はドアノブに手をかけて重そうな扉を開いた。

そこに居たのは一次試験の試験官だったサトツ、二次試験の試験官だったブハラ、そしてメンチの三人。
三人は意外な人物が現れたことに驚きを隠せない様子で、目を大きくさせている者、今までの動作が完全に止まった者、驚いてはいるが表情には出さない者、反応はそれぞれだった。



「ゴホン、貴女は確か…#name#さん、でしたね。いかがされましたか?」
「あ、突然すみません…。メンチさんにちょっとお話があって」
「あたしに?」
「メンチに用があるなんて物好きな人だなァ」
「…ブハラ、あんた今なんか言った?」
「あ、いや…」



咳払いを一つしたあとにサトツが#name#に用件を訊く。
#name#は軽く返事をしたあとでここへ来た理由、即ちメンチに声をかけて彼女に近付いた。
ブハラの一言に対してメンチは怒りの問いかけをしたが、ブハラは冷や汗を掻きながらそれ以上は何も言わずに目を逸らす。

この部屋は試験官用の部屋だからなのか、扉もそうだが中の造りも船内とは違ってかなりしっかりしていた。
当然といえば当然だが、やはり受験者と試験官ではだいぶ扱いも違うらしい。
軽く部屋中を目で追ったあと、#name#はここへ来た本来の目的を思い出してメンチに話しかける。



「あの、メンチさん!お願いがあるんです!」
「なに?…そういえばあんたはあのハゲと同じでジャポン出身だったわね」
「あ、はい!」
「ふーん…。いいわよ、で、どんなお願い?」
「…私に料理を教えて下さい!!」
「「「………へ?」」」



#name#の表情から何か深刻な相談に来たものかと思っていた三人だったが、その三人の予想は見事に裏切られ、開いた口が塞がらない状況だ。
ブハラに至っては、フォークに刺して今まさに食べようとしていたウインナーを落としてしまったほど。

だが最も驚いたのは名指しされたメンチだった。
先程の試験で充分に分かったはずではあるが、彼女は食材、料理について相当な目を光らせるほど厳しい。
それは一度不合格になった#name#本人が一番よく理解しているはず。
それなのにわざわざ厳格なメンチに料理を教えてくれという#name#の心情はどういったものなのか。
#name#の心中が気になった三人、特にメンチは自分に頼み込んだ理由を訊いてみることにした。



「なんで料理をあたしに?」
「メンチさん食について詳しかったですし、料理のコツとかも色々と知ってそうだったので…」
「まぁ美食ハンターだからね。じゃあなんで急に料理を作りたいと思ったの?」
「…疲れてる仲間の皆にご飯を作って、少しでも元気になってほしくて…」
「なるほどねー…」



自分を選んだ理由、急に料理を作りたいと言い始めた理由を、#name#はメンチに隠すことなく素直に話す。
自分を選んだ理由に至っては嘘偽りはなさそうだったが、メンチが違和感を覚えたのは料理を作りたい理由の方だった。

"仲間に食べさせたい"、この理由ももちろん本当のことだと思うが、それよりも何か理由があるのだろうということを、同じ女性同士のメンチは見逃さない。
メンチも試験官を任されるほどの実力者、それは武術だけではなく思考力や洞察力、着眼力などあらゆるところにおいてバランスが整っている女性。


料理をしたいと口にした時、#name#は僅かだが目線を泳がせる仕草を見せた。
そして話し終えたあとに唇をキュッと結んだり、ほんの少し頬が紅潮したりもしたため、#name#に直接訊かなくてもメンチは本当の理由を悟る。
十中八九、意中の相手に食べさせたいのだろう。



「いいわよ。但し、あたしは厳しいからね」
「はい!お願いします!」



何かを企てているような娘でもない、ただ単純に仲間や特に気になる彼に料理を振る舞いたいという純粋な気持ち。
こういう人間が好きなメンチは#name#の気持ちも汲み、料理のコツやポイントなどを伝授することにした。





振る舞い(前編)



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