Sleep Time


振る舞い


#name#が部屋を出て行ってからどのくらい時間が経っただろうか。
壁に掛けられている時計に目をやると、この部屋へ入ってから既に1時間ほどが経過している。
当初はどんなに遅くとも30分ほどで帰って来ると思っていたため、それより倍の時間が過ぎていることにまた疑念が沸く。

その時、#name#が居なくなってから一度も開く様子がなかった扉がゆっくりと音を立てて動いた。
そして同時に食欲をそそるいい香りが周囲に立ち込める。



「みんなお待たせ〜!」
「#name#!あれ?なんかいい匂いがする…」
「ホントだ、どこからだ?」
「みんな試験で疲れてるでしょ?さっきメンチさんに教わってハンバーグ作ったんだよ」
「おぉっ!旨そうなハンバーグだな!」



台車を引いて来た#name#、その台車の上には五人分のハンバーグが乗った皿が乗っている。
…なるほど、ようやく理解した。
#name#がわざわざここへ呼んだのは、我々に自作の料理を振る舞うため。

彼女自身もハンターを志しているため、当然ながら試験を受けている受験者だ。
これまでの試験で#name#も疲労が溜まっているはずなのに、休息の時間を割いてまで食事を作ってくれたことに驚きと感謝の思いが沸き上がる。
本当に#name#は優しくて気遣いの出来る、オレの理想の女性像。
色々と考えている間にも#name#は休むことなく、食事やナイフ、フォークなどの食器を並べていく。



「それじゃ、冷めないうちにぜひ食べて」
「おう!いっただきまーす」
「オレ、ハンバーグめっちゃ好きなんだよね」
「キルアも?オレも好き!」
「では#name#、有り難くいただくよ」
「うん!どうぞ召し上がれ」



#name#の掛け声と共に、彼女が丹精込めて作ってくれたハンバーグを口へ運んだ。





ーーー…
ーーーー…
ーーーーー…




「はぁ〜、食った食ったー」
「#name#のハンバーグすっげー美味しかった!」
「うん!今度はオレたちが何かしないとね」
「…………」
「ふふ、みんなありがとうね」


食事を終えたオレたちは食器を台車に片付け、満腹感に満たされたながら椅子に腰をかけて休んでいる。

#name#の作ったハンバーグは本当に美味しかった。
好きな女性が作ってくれたというのもそうだが、柔らかさもあったがしっかりとした肉感もあり、それが見事に調和していて絶品だった。
以前、#name#と食べ物や料理の話をしたことがあるが、料理を作るのは苦手だと聞いたことがある。
料理は調味料の配合やら切り方、彩りを考えた付け合わせなど、頭の中でたくさんのことを考慮しなければならない。
特に基本に忠実、そして繊細さも兼ね備えている#name#の国ではそういったことにも厳しい目で見られるという。

その話をした時の#name#は本当に嫌そうな表情をしていて、料理に対して相当な苦手意識を持っていると思ったものだ。
そこまで嫌悪感を抱いているのに、本来なら彼女も次の試験まで部屋でのんびりと寛いでいたかったであろうに、それでも我々に料理を振る舞ってくれた。
それが何より嬉しい。



「じゃあ私、洗い物してくるからみんなはゆっくり休んでてね」
「あぁ、すまねぇな」
「オレまだお腹いっぱいで動けないや」
「オレもー」
「では、私は一足先に部屋へ戻るとしよう」



少し休んだ#name#は、先ほど片付けた食器を乗せた台車を引いてこの部屋を出て行く。
彼女が去るのと同じタイミングで、オレもゴンたちに一言発してから立ち上がり退出した。

"部屋へ戻る"とは言ったものの、オレが向かう場所は自室ではなく台車を押して厨房へ足を運んでいる#name#の方。
女性の歩幅なら早歩きしなくてもすぐに追い付ける位置に居たので、いつも通りの速度で彼女を追い掛ける。



「#name#」
「?クラピカ!」
「私も一緒に洗い物をしよう」
「えぇっ!?い、いいよ、クラピカはゆっくり部屋で休んでて大丈夫…」
「タダで帰るというのは性格上イヤなんだ。手伝わせてくれ」
「あ、うん…」



#name#にすぐ追いつき、彼女が押していた台車を今度はオレが押し始めた。
先ほどの五人で居た時は違い、お互い口から紡がれるものはなくただ黙々と厨房へ歩を進める。

ずっと沈黙を保っていても良かったが、オレがいま#name#と一緒に居るのは食器洗いの手伝いをするため…だけではもちろんない。



「#name#の作ったハンバーグ、とても美味しかった」
「本当に?嬉しいなぁ…ありがとう」
「こちらこそ。………。」
「クラピカ…?」



押していた台車を止め、自らの歩みも止めたオレを不思議そうに見る#name#。
そう、オレがここに居るのは#name#と二人きりになってお礼を言うこと。
そしてもう一つ…。

#name#の手と自分の手を絡めて繋ぎ、彼女と同じ目線になるように腰を落とした。
空いているもう片方の手を彼女の白くてなめらかな頬に添え、そっと自らの唇を触れさせる。



「今度は…オレだけに作ってほしい」



頬辺を赤らめた#name#は開いた口が塞がらない状態だったが、それに構うことなくオレは彼女の耳にそう呟いた。






振る舞い(後編)



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