外出×アクシデント×約束
「クラピカ、準備できたよー、行こう!」
「あぁ」
今日は数ヶ月ぶりに仕事が一切ない日。
最近は緋の目回収の情報収集に追われ、なかなか休みが取れなかった。
次々にパソコンの画面に溢れてくる仲間の眼の居場所。
以前のようにいつ競売やネットオークションで売られるか分からないため、情報が出て来たら即座に動いて回収作業に明け暮れていた。
仕事で忙しくしていたため#name#との時間を作ることが出来ず、今まで彼女には寂しくつまらない思いをさせてしまったと思う。
今日は完全にオフにして#name#と二人で街まで出掛けようと提案し、準備が整った#name#がオレを呼びに来た。
ノストラードファミリーに雇用されて少し経った頃から、オレは今まで着ていたクルタ族の衣装を脱ぎ、スーツを着用している。
今日は仕事ではないので久々に懐かしい民族衣装を身に纏い、気分もどことなく軽やかだ。
もちろん久しぶりに#name#と二人で外出できるから、というのが理由としては一番大きい。
「クラピカと一緒に出掛けるの久しぶりだから嬉しいな」
「すまない#name#、なんとか時間を作るようにはしているんだが」
「あ、ごめんね。そういう意味で言ったんじゃないんだよ」
事務所を出て街に入り、会話をしながら#name#の行きたがっている場所へ行って欲しいものを買ったり、カフェで食事をしながら穏やかな時間を過ごす。
女性の買い物は長い上に買うものが多いとは聞いているが、#name#に至ってはそのような気質はないようで、店に入ってからもあまり購入までにはならない。
どちらかというと見て楽しんでいる感じだ。
あまり物欲がないのが彼女らしいと言えばらしいが、もう少し我が儘を言ってくれてもいいような気もする。
只でさえ#name#はこれまで我慢を強いられてきたのだから。
お店やカフェを一通り見終えたあと、今度はオレの希望で少し大きめの広場へ行くことに。
何か特別なものがあるわけではないが、なんとなく自分の中であの場所は憩いの場のような存在になっている。
せっかくここまで来たのだから、#name#と一緒にここへ来てゆっくり広場内にある池でも眺めながらのんびり過ごそうかと考えていた矢先。
「…#name#?」
「…え、あ…なに…?」
#name#に話しかけようとした時、どことなく彼女の様子がおかしいことに気が付いた。
不審に思い彼女の名前を呼ぶと、やはり上の空といった感じで生返事。
体調でも悪いのかと心配になって数秒ほど#name#を見ると、微かに足を引きずっているような素振りを見せた。
まさか…と勘づき、オレはすぐ#name#に問い質す。
「#name#…足が痛いのか…?」
「えぇ…っ!?あ、いや…い、痛くないよ全然!」
「…足を見せてくれ」
「いや、大丈夫!大丈夫だから…あの…」
「…失礼する」
「わわ…っ、あ…」
「…………」
明らかに不自然な態度を取る#name#にオレは確信めいたものを感じ、一言詫びてから地面に片膝をついて彼女の足を見る。
そっと手を当てて足全体を見ると、靴を履いている辺りが赤くなっているのが確認できた。
擦れてしまっているようで今にも血が出そうな状況。
こんなになるまで気が付かなかったオレも不甲斐ないが、痛みに耐えて歩いていた#name#にも腹が立ってしまった。
「何故こんなになるまで黙っていたんだ!!」
「っ!ご、ごめんなさい…。せっかくクラピカと久しぶりに出掛けるからこんなことで帰りたくなくて…」
「………」
「ごめんなさい…」
頭に血が昇ったオレは#name#に一喝し、彼女に我慢していた理由を訊いた。
その理由を聞いてオレはなんとも言えない気持ちになったが、激昂していた心は急激に冷めて少しずつ落ち着きを取り戻す。
#name#の気持ちは嬉しくもあるが、だからといって黙っていたら足の擦れはどんどん増すばかり。
今オレがすべきことは#name#に怒鳴りつけることではなく、彼女の足にこれ以上負担をかけさせないようにすること。
#name#の背中と膝裏に腕を回して抱き上げ、目指す場所はオレが行きたがっていた広場へ。
#name#は周囲の目を気にして取り乱していたが、よほど足が痛むらしく少し抵抗したあとは大人しく縮こまっていた。
広場は歩いて5分もあれば着ける場所にあり、#name#の足を時折気にしながら向かう。
先程も見たが、今も血は出ていない。
無言の状態のままオレは#name#を抱き抱えて歩いていたが、その沈黙はオレ自身が破ることになる。
「#name#…先程は怒鳴ってすまなかった」
「ううん…私が悪いから…私こそごめんなさい…」
「…一つ、約束してほしい」
「?」
「これから何か少しでも違和感があったらすぐに言ってくれ」
「うん…」
「痛みに耐えたら…場所によっては手遅れになる」
「うん…そうだね…クラピカ、怒ってくれてありがとう…」
#name#に謝罪をして大切な約束を一つ。
ただ、#name#が足を引きずるまで我慢していたのはオレにも責任がある。
仲間の眼を回収することばかりを第一優先にしてしまい、そして正直なところ、#name#は常に傍に居てくれていたから二人の時間を疎かにしてしまっていた。
久しぶりの二人だけで外出する、二人だけの時間。
次はいつ出掛けられるか予定が組めないのだから、多少ムリをしてしまうのも解らなくはない。
だからこそ、オレがこれからすべきことは#name#がもうこれ以上ムリをしないように彼女との時間を作ることだ。
広場に着き、池の前に配置されているベンチへ#name#をゆっくり座らせる。
そして隣へ座り、#name#の頭を静かに撫でて体を自分の方に引き寄せ、彼女の頬にそっと唇を落とした。
外出×アクシデント×約束
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