#ボクノユビサキ
ハンター試験会場に行く際に出会ったゴン、レオリオ、#name#。
そして一次試験中に出会ったキルア。
そのあとは行動を共にし、様々な困難をくぐり抜ける中でかけがえのない大切な仲間となっていった。
しかし、一つだけ気になることがある。
仲間の中で唯一の女性である#name#、彼女はなかなか我々に本心を語ろうとはしないこと。
#name#は笑った顔がとても可愛い、オレたちのことをいつも心配してくれる女性。
優しい女性であることは間違いないのだが、どことなく自身のことを話さない。
#name#が好きなオレは、出来れば彼女の生い立ちなどを知りたい。
「#name#はあまり自分のことを話さないな」
「え、そう…かな?」
「過去のこと…あまり話したくないのか?」
「…そういうわけじゃ、ないんだけど……」
「私は#name#のことが知りたい」
「クラピカ…」
船内でたまたま二人になる機会があり、ずっと訊きたかったことを問う。
こんなことを訊かれるとは想像していなかったのか、#name#は少し動揺して合っていた目線を逸らした。
もちろんいくら行動を一緒にしていても全てをさらけ出す必要はどこにもない。
多くを語りたくない性格かもしれない。
それでも自分の中にある醜い欲が、彼女の全てを知りたいと訴え続ける。
#name#は変わらず視線を合わせず、話すことに迷いがあるのか黙ったまま。
やはり訊かない方が良かったのか…と少し後悔の念に駆られたが、#name#はゆっくり縛っていた唇を解いて話し始める。
「…私もクラピカと同じで、大切な人を殺されたの」
「………」
「私の場合は家族なんだ。殺した人は、私が信頼してた家政婦さんだった…」
「…そうか。すまない、つらい過去を無理に思い出させてしまった」
「ううん…。いつかは皆に言おうとは思ってたから…」
ゆっくりと、そして神妙にポツポツと自身の経緯を語る#name#。
まさか#name#がそんなつらい過去を経験していたとは知らなかったオレは戸惑い、無理に訊き出したことを謝罪した。
彼女の過去を知り、それまで笑顔が眩しく穏やかな性格なのに、どこか哀しそうな顔をしているような気がしていたのにはこういう理由があったようだ。
大切な人を奪われたつらさはオレにもよく解る。
自分も大切な人も、何一つ悪いことなんてしていないのに突然人生を狂わされる怒りや悲しみ。
この理不尽すぎる現実をどこにもぶつけることが出来ないもどかしさ。
自分一人だけが残される虚無感。
家族を失ってから#name#はずっと一人で生きてきたのだろう。
似たような生い立ちを持っていると知ったオレは#name#の傍に居たいという気持ちが一層増し、彼女の方に顔を向けた。
#name#の瞳からは哀しみの雫が溜まり、溢れたモノはそのまま重力に従うよう頬へ、そして顎のところで数秒ほど止まっては下に落下していく。
その光景は耐えず続き、次第に#name#は目を強くつぶってすすり泣く。
愛しい女性が泣いているのを見てオレ自身も心が重くなり、咄嗟に#name#の腕を引っ張って彼女の華奢な体を抱きしめた。
「え…クラピカ…?」
「#name#…今なら私しか居ない。これまで我慢していた分、思いっきり泣くといい」
「…!」
「私がこうして抱きしめている時は…君の涙は誰にも見られることはない」
「………」
「私の前では…涙を堪えたりしないでくれ」
「………うぅ…っ」
オレの言葉が響いたのか、それともずっと一人で耐え忍んできたからなのか、糸が切れたように嗚咽を漏らしながら泣き始める#name#。
#name#は仲間になってからも、なかなか心の扉を開いてはくれなかった。
今回はオレの傲慢さが勝っていたから#name#がそれに折れたという感じだったが、それでもこうやってオレの腕の中で感情を出してくれているのは素直に嬉しい。
今まで独りで寂しかったことだろう。
#name#の泣き声を聞きながら、オレの腕は彼女を抱きしめるために在りたいと願ってしまう。
そして#name#の震える体を抱きしめながら、オレの指先は彼女の涙を拭うために在りたいと思った。
他の誰でもない、オレ自身が#name#の隣でずっと支えたいと渇望する。
ーーー…
ーーーー…
ーーーーー…
あれから何十分が経過しただろうか。
立ったままなのも#name#が疲れると思い、船内の壁にもたれかかる形で座って彼女を自分の方へ寄せ、それからゆっくりと時が流れていった。
#name#の方へ目を向けると涙はもう止まっていて安堵したが、その代わりに目元がだいぶ赤く腫れ上がってしまっていて少し痛々しい。
心配して見ていると、オレの視線に気付いた#name#がふいにこちらを見上げて目線が重なり合う。
涙を流したからなのか、いつものあどけなさが残るような表情ではなく艶やかな顔付きだったため、オレの鼓動が正常な時より倍の速さで動いているのが分かった。
「クラピカありがとう…今まで泣かないようにしてたから、なんでかな…泣いたら少しスッキリしたよ」
「そうか、それなら良かった」
「クラピカは強いなぁ…私よりつらい過去を背負ってるのに」
「これでも男だからな。…#name#は我慢しなくていい。また泣きたくなったら、いつでも私のところに来るといい」
「うん…本当にありがとう…。」
少し切ない表情でオレに礼を言う#name#。
まだ10代なのに惨憺たる記憶を持っている#name#、どうかこれから先は幸せな日々が訪れるようにと、彼女の腕を引き寄せながら願うばかりだった。
#ボクノユビサキ
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