治るまでお預け
「ゴホッ、ゴホッ…ッ」
「クラピカ大丈夫?」
「あぁ…」
連続で咳き込むオレに心配の言葉を投げかけてくれる#name#。
…最悪な状況だ。
ハンター試験の真っ只中だというのに急に体調が悪くなり、体温を測ってみたところ38度近くあった。
過酷な試験の影響なのか偶然なのかは分からないが、試験中に体調を崩すなどあってはならない。
体調管理もハンターになるにあたって大切なこと。
普段は具合が悪くなることなんて滅多にないというのに、何故よりによってこんな時に…と心の中で嘆く。
わざわざオレの部屋に来て看病をしてくれている#name#だって、本当は自身の部屋でゆっくり体を休めていたいだろう。
不満な顔を少しも見せず、むしろ積極的に介抱してくれる#name#は本当によく出来た女性だと思う。
「すまない#name#…」
「いいんだよクラピカ、今はゆっくり休んで次の試験までに治さないと」
「…あぁ」
#name#に謝罪すると、全く気にしていないような顔でオレの額に触れる。
オレが熱を出しているからか、平熱の#name#の触れる手がとても冷たく感じて心地良い。
濡らしたタオルをオレの額に乗せ、タオルが熱を帯びてくると水を含ませて冷やし、また額に乗せるという動作を繰り返しやってくれている#name#。
冷たいタオルも気持ちいいが、彼女の手の心地好さには到底敵わない。
#name#の献身的な介抱のおかげか、熱を出した時に比べて少しずつ良くなっているような気がする。
咳はまだ発作的に続く時はあるが、熱から来ている怠さは緩和しておりベッドで上体を起こせるようにまで回復した。
ベッドの端で腰をかけている#name#がずっと優しく手を握ってくれていて、それが嬉しくてお礼の意味も込めて握り返す。
指先から伝わる彼女の体温が冷たいのと同時にとても温かく感じ、体調が悪いのにも関わらず妙に体が疼いた。
いや、むしろこういう時だからこそ…かもしれない。
ふと、繋がれた手の感覚が消えたと思い#name#の方を見ると、ベッドからゆっくり立ち上がってどこかへ行こうとしていた。
部屋から出て行くわけではなく、おそらくトイレか飲み物欲しさに冷蔵庫へ向かうためだとは思ったのだが、彼女との触れ合いがなくなったことでオレの心は急激な不安に襲われる。
#name#が離れていくことに心も体も拒絶反応を起こしたオレは、まだ倦怠感の残る体を無理やり動かして彼女の元へと急いだ。
「#name#…っ」
「わっ…!?ク、クラピカどうしたの…?!」
「…………」
咄嗟にオレもベッドから立ち上がり、後ろから彼女を力強く抱きしめる。
そのままゆっくり後ろへ下がり、今の状態を維持しながらベッドへと戻り腰を下ろした。
まだ熱があるため少し動いただけで息が切れるが、体の気だるさよりも#name#が近くに居なくなることの方がずっとつらい。
腕の中に居る#name#に目を向けると、普段は白い彼女の顔がうっすらと紅く染まっていて、恥ずかしそうに目をつぶっていた。
風邪を引いているからなのか、いつもより彼女がほんの少しだが霞んで見える。
#name#は常に可愛いが、ぼやけて見えるせいかいつもより色気があるようにも見え、それがオレの欲情を奮い立たせてしまった。
どうにか抑え込もうにも理性より本能の方が圧勝していて、堪えきれず彼女の顎を持ち上げ薄紅に着色された頬に口付けをする。
唇を離して再度#nameを見ると、またしても照れくさそうにしてオレと目を合わせようとはしてくれない。
本当は彼女の唇にキスをしたいが、オレの風邪が移る可能性も否めないためなんとか頬に留めた。
「ん…、クラピカ…」
「#name#?」
「ダメだよ…こんなことされたら…」
「…されたら?」
視線は下に伏せたまま、体をソワソワさせている#name#。
その行動と言動で彼女の思考を察知し、分かっているにも関わらずわざと知らないフリをして#name#の口から直接言わせようと試みる。
だが、そこから先は言ってはいけないと分かっているからか、なかなか口を開かない。
風邪を引いているオレに配慮してなのか、それとも単に言葉にするのが恥ずかしいのか。
どうしても彼女の口から聞きたいオレは抱きしめていた腕を解き、そのまま#name#をベッドへ引き摺り倒す。
いつもはなんてことはない押し倒している間の腕だが、さすがに今日は上手く力が入らない。
腕の力が不安定なためにベッドに肘をつき、押し倒すというよりは覆い被さっている形になる。
息も荒く力もいつもよりないオレを見て、#name#はオレの頬に自分の唇を触れさせた。
先程オレが彼女の頬にキスをした時と同じように。
「#name#…」
「クラピカ、あの…クラピカの風邪が治ったらにしよう?」
「………」
「クラピカがつらそうにしてると私もつらいから…」
「……分かった。だがその代わり…治るまでは私の傍に居てほしい」
「!うん、もちろん」
本当は今すぐにでも#name#の服を脱がせて激しく抱きたい。
が、今の状態だと彼女を抱くどころか途中で体力がなくなってしまうことも大いにあり得る。
己の欲、体力と相談して、出した答えが"治るまで我慢"することだった。
#name#がオレのつらそうにしている姿は自分もつらいと言ってくれたように、もし彼女にオレの風邪が移ってつらそうにしてたらオレも苦しい。
疼き出した欲望をなんとか落ち着かせて再度ベッドに全身を預け、一つだけ軽いため息を吐いてゆっくり目を閉じる。
それと同じくして左手に冷たい感触が走り、閉じた瞳を開けると#name#がまたオレの手を握っていて。
繋がれた手と笑顔で見つめる#name#にホッとして、彼女を傍で感じながら、オレは安心して眠りの世界へ入った。
治るまでお預け
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