Sleep Time


出会い


ハンターになれば今まで行けなかったところにも簡単に行けるようになったり、情報の検索も広範囲で出来るようになるらしい。

旅団の連中は賞金首として名を世に知らしめている。
よって付近に奴等が居た場合、ハンター専用の賞金首リストに現在地が随時更新されているらしい。
とはいえ、連中も自分たちが常に狙われていることは承知で、居場所が特定されてもすぐに別の場所へ移ってしまう。
奴等は基本的に消息を絶つ存在だが、敢えて情報が飛び込んでくるということは、おそらく何かしらの理由があってのことだろうが。

ハンターではない今のオレには、奴等の情報が入ってくることはほとんどない。
たがハンターになれば、それまで踏み込めなかった部分にも入ることが出来る。
どんな試験、どんな強豪たちが揃っているか分からないが、絶対に勝ち進んでみせる。



「ふぅ…」



指定の船に乗り、ナビゲーターを探すためドーレ港へ向かう。
周囲を見渡すと、かなり強面な体型、顔をした人間が何人も乗船しているのが分かった。
もっとも、外見だけではその人間のステータスは計れない。
見た目だけで中身は空っぽ、なんてこともある。


これからいつ、どんな場所で攻撃されるかも分からないため、オレの気は常に立っていた。
そんな時、船内の床に座り込んでいたオレの眼前に一つの影が出来る。



「…私に何か用か?」
「あっ、ごめんなさいっ!あなたもハンター志望の人ですよね?」
「…そうだが」
「やっぱり!年が近そうだったから…。あ、お腹空いてませんか?良ければどうぞ」
「?」



何者かと思い顔を上げると、そこにはオレと同い年くらいの女性が笑顔で立っていた。
オレがハンター志望であることを確認すると、この女性は自分の鞄から何かが入っている容器を取り出し、蓋を開けてそれをオレの目の前に差し出す。


正直、彼女の意図が全く分からなかった。
名前すら知らない女性、ましてやたった今話しかけてきた人間に渡されたものなど口に出来るわけがない。
何も言わずに女性を見ると、とても澄んだ瞳をしていてとても人を陥れようなどといった思想はなさそうに思える。
ただ人は見かけによらないため、実際の見た目とは裏腹に計算高い可能性だってあり得るわけだ。
同じ民族の人間なら別だが、外の世界の人間をそう簡単に信じるわけにはいかない。



「いや、悪いが私はーー…」
「おっ!旨そうな飯だな!」
「ホントだ!いいなー、オレたちも食べたいー!」
「あ!もし良ければあなた方も食べますか?」
「はーい!!」
「な……っ」



この女性には申し訳ないと思いつつ断りの返事を言おうとした矢先、横から二人の男の声がして、咄嗟にオレは声の主の方に顔を向ける。
一人はスーツを着用した長身の男、もう一人は釣竿を持ったオレより少し年下くらいの少年。
この船に乗っているということは、彼等もハンター志望者なのだろう。

全く、先程から信じがたいことが立て続けに起きている。
ハンターというのは基本的に個々で動くもの。
それ故、自分以外の人間には常に壁を作り他人は疑ってかかった方がいい。
それなのにこの見知らぬ2名の者は、これまた見知らぬ女性からの食べ物をなんの疑いもなく手に取り、そして口に放り込んだ。
この行動から、彼等は今まで平和に生きてきたのだろうというのは安易に想像できる。

そして何故か、そんな二人を羨ましいと思う自分も居た。



「おっ、これうめぇな!」
「うん!いい感じに塩が効いてて美味しい!」
「わぁ!嬉しいです!あ、あなたもどうですか?」
「…………」



名も知らない二人は、差し出されたライスを固形にしたものを豪快に頬張ったあと、笑顔で女性に感想を言う。
女性も二人の評価を聞いて満足そうな顔を浮かべ、再度オレにもそのライスを食べるか訊いてきた。
オレは目の前にあるそれを無言で見つめる。
彼等が先にこれを食べて今も満たされている表情をしていることから、やはり毒が盛られているなどといったことはなさそうだった。

そしてちょうどオレの腹も空腹を訴えていて、先程から何度か低い音が腹部から鳴っている。
数秒ほど悩み、彼女の真っ直ぐな目と彼等の美味しそうに食べていた姿を思い出したら、不思議と自分の口角が上がるのを感じた。
何故だろうか、この三人を見ていると常に他人を疑って見ている自分が馬鹿馬鹿しく思えてしまう。
オレは彼女が持っている容器に入ったライスを一つ掴み、包装されている銀色の紙を剥がして食べ始めた。


…美味しい。
初めて見て初めて体に取り入れるものだが、シンプルな味なのにとても美味しく夢中で食べてしまうほど。
彼女の国の郷土料理だろうか。
あっという間にそれを平らげたオレを見て、女性はとても嬉しそうな顔をしていた。



「…貴女の名は?」
「あ、#name#っていいます!」
「#name#、か…。とても美味しかった、ありがとう」
「こちらこそ!…えと……」
「私はクラピカだ」
「クラピカさん…」
「クラピカでいい。よろしく、#name#」



ライスを食べたあと、そういえばまだ彼女の名前を知らないことを思い出して本人に訊いた。
彼女の名は#name#、年齢はオレと同じ17歳とのこと。
そして気になっていた、先程オレが食べたものはやはり#name#の故郷で昔から食べられていたようで、正式な名前は"おにぎり"というらしい。
普段は主食といったらパンだったからか、このおにぎりという食べ物にとても新鮮な印象を受けた。

知らないことを知れる喜び、幼い頃は持っていた感情を呼び起こされた感覚。
それが懐かしく感じて、思い出させてくれた#name#を見て笑みが溢れた。



それから彼女と先程の二人と仲間になって行動を共にし、#name#に対して淡い思いを抱いていくことを、この時のオレはまだ知らない。




出会い



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