別れ×ネックレス×9月1日
ハンター試験が終わったあと、神妙な面持ちで会場を去ったキルアに会うため、ククルーマウンテンを目指した。
キルアの実家は暗殺一家と有名なだけあってなかなか屋敷に辿り着くことが出来ずに苦戦したが、なんとか無事に再会することが出来た。
そしてゴン、キルア、レオリオ、#name#、オレは別の道を歩むことに決める。
五人で空港へ行き、次に会うのはヨークシンシティと約束して別れた。
だがオレは#name#に渡すものがあり、別れたあとに追いかけて彼女の腕を掴む。
後ろから突然引っ張られて振り返る#name#に、先程は感じなかった違和感があった。
「ク、クラピカ…どうしたの?」
「…#name#こそ、何かあったのか?」
「え…」
「別れた時より元気がなさそうだが」
腕を引き、#name#の顔を見て感じた違和感。
さっきは笑顔で皆と別れたはずなのに、今の#name#はとても曇った表情をしていた。
別れたあとに何かあったのだろう。
彼女はこのあと国へ戻り、大好きな家族にハンターになれたことを報告したいと喜んで話していたため、故郷に帰るのが嫌というわけではなさそうだった。
では何故こんなに表情が暗いのだろうか。
考えていても#name#は話してくれない雰囲気、そして互いに飛行機へ乗る時間もあったため、オレは口を開いて彼女に訊いてみることにした。
「#name#、理由を話してくれ」
「…寂しいなって、思ったの」
「?」
「みんなとの時間、クラピカとの時間が…すごく、私にとって楽しい時だったから」
「#name#…」
「一人になったら急に周りが静かになって…すごい寂しくなっちゃったんだ…」
オレがもう一度問うと、#name#は思ったより素直に今の心境を話してくれた。
#name#にとってこの数ヶ月は今まで生きてきた中で最も大変で恐怖した時もあったが、それ以上にとても楽しかった、と。
国にもたくさんの友達が居て賑やかな時間を過ごしていたようだが、我々は友達ではなく仲間だと言う。
我々は共にハンターを志したライバルであると同時に、何より大切な存在になっていた、と。
彼女のどんよりした顔の理由は分かったが、こればかりは皆それぞれやりたいこと、目的が違うのだからどうしようもない。
オレも本当は#name#と一緒に居たいが、オレと#name#とでは住む世界が違いすぎる。
…だからこそ、アレを#name#に渡したいと思ったのだから。
オレは下げていた鞄を開けて、少し長細くなっている箱を#name#に渡す。
「?これは…」
「…開けて#name#の目で確認してほしい」
「……。あ…これ、ネックレス…?」
渡された箱を受け取って不思議そうに眺めていた#name#だが、オレが開けるように促すと彼女は小さく頷いてゆっくりその箱を開いた。
#name#はその箱に入っている物体の名前を口にすると、それを優しく片手に取って左右からまじまじと見始める。
今はちょうど日中で、空港内の窓から差し掛かる日射しがネックレスに反射してとてもキラキラしていた。
このネックレスを買ったのはほんの少し前。
キルアと再会してこの空港に到着したあと、五人で食事を取って1時間ほど自由時間があった。
レオリオやゴンはせっかく観光地に来たからとのことで、土産売場などを何軒も回り、たくさんの特産品を買い漁っていた。
オレはというと、土産ももちろん拝見したが、ある店の前で歩いていた足が停止する。
立ち止まった店はジュエリー店。
外から見える店内に軽く目を通すと、透明な衣装ケースの中に燦々と輝く宝石や、よく女性が首や指、手首につけている装飾品が展示されている。
それを見てふと#name#の顔が頭の中に浮かんだ。
#name#の身なりを思い返してみたところ、彼女はこういったものは身につけていなかったと記憶している。
金属アレルギーがあるとは聞いていなかったため、おそらく単に"所持していないからつけていない"のだろう。
そしてハンター試験中、女性の受験者が身につけていた飾りを絶賛していたので、嫌いというわけでもなさそうだった。
あと1時間ほどでゴンたちとも、#name#ともお別れ。
愛しい#name#には、離れる前に何かあげたかった。
「次に会うのは9月1日。それまで…これを私だと思って身につけていてほしい」
「クラピカ…」
「私も#name#と離れるのは寂しい…。だが、これが永遠の別れではない」
「うん…。うん…、そうだよね…。ありがとうクラピカ…」
オレの気持ちと言葉を聞いて少し安心したのか、#name#は目を閉じて2回、緩やかに頭を頷かせる。
きっとまだ寂しい思いは拭えないだろうが、お互い乗る便がそろそろ飛び立つ時間だ。
オレは#name#が大事に持っているネックレスを手に取り、彼女の白くてしなやかな首にかける。
数ある中から探し当てた、彼女に似合うと思ったもの。
つけてみたら思った以上に#name#にピッタリと合っていて、やはり買って良かったと心から思った。
オレはこれから本格的に雇い主を探すことになる。
離れるようになったらお互い忙しくて、思い返すことも少なくなるかもしれない。
つけているネックレスの存在すら忘れてしまうかもしれない。
それでも確かに彼女はオレにとって大切な仲間であり、愛しい女性。
独り善がりなオレからの贈り物だが、#name#はそんなネックレスを嬉しそうに見つめる。
次に会うのは9月1日。
それまでどうか、出来ればオレのことを忘れず日々を過ごしてほしい。
9月に再会するのを心待ちにしながら、オレは#name#の頭を
撫でて自分の乗る飛行場へ向かった。
別れ×ネックレス×9月1日
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