青薄
ハンター試験も概ね中盤くらいまではいっただろうか、今は無人島に飛行船が着陸し、ここで2〜3日ほど休息の時間になった。
受験者の行動はそれぞれ違い、食料を見つける者、本当にこの島は無人なのかを確認しに奥へと突き進んで行く者、体力を温存するために敢えて動かない者など様々。
我々はというと、オレ以外は小さな川に入って川遊びをしていた。
レオリオを筆頭に、ゴンもキルアもレオリオと同じく下着1枚で川へ入り互いに水をかけ合っている。
この3人だけならまだしも、#name#も一緒になって川に入っているから内心ヒヤヒヤしている自分が居た。
もちろん#name#は下着姿なんてことはなく、上に羽織っていたジャケットを脱いで身軽になったくらい。
足は元々ショートパンツを履いているため、特に裾を捲ったりすることもなく、不自由なしでゴンたちと楽しんでいる。
そして#name#はたまにこちらを気にかけてくれて、オレに笑顔で手を振ってくれるところがとても可愛い。
オレは#name#に好意を抱いているが、おそらく#name#もオレのことを気にしている。
試験中、行動を共にしながらやたらと視線が重なり、そうなると彼女は必ずと言っていいほど頬をほんのり染めて目を逸らす。
二人になっても特に何も言わず、#name#の性格からしてその気持ちを言葉にすることはこれからもおそらくないだろう。
「クラピカー!!」
「なんだ?」
「クラピカもこっちに来て水浴びしようよー!」
「…そう、だな」
木陰に腰をかけて彼等を眺めていると、#name#がオレの方を見て手招きする。
しばらく陰で休んでいたせいか日射しが照らされている場所に出るのは気が進まないが、#name#のあの眩しい笑顔を見たら誘いに乗らないということは出来ない。
重い腰を持ち上げて水遊びをしている#name#たちの方へ行くと、早速レオリオたちから洗礼を受ける。
ゴン、キルア、レオリオは自分たちに向かって歩いてきたオレ目掛けて両手に水をたっぷり溜め、そのまま大量の水をオレの顔に掛けてきた。
水を浴びたオレは柄にもなくムキになってしまい、ボトムスの裾を捲るのも忘れそのまま川の中へ足を踏み入れる。
そして倍返しするくらいの勢いで3人に水をかけて反撃した。
そんな我々を見ながら楽しそうに笑う#name#。
普段あまり感情を表に出さないからか、オレが珍しく子供のように怒っているのを見て一緒になって加勢してくれている。
オレが川に入ってから#name#も気分が高まったようで、爪先で思いっきり川の水を蹴散らかした。
その時に跳ね返った水飛沫がオレの体や瞳を濡らし、そして何故か妙に冷たく感じる。
この水の冷たさが、腹が立っているオレの心を少しずつ冷却して落ち着きを取り戻してくれた。
「ふふっ」
「…なんだ#name#」
「ううん、なんかクラピカ楽しそうだなぁって」
「いや、全く楽しくない。服も髪も濡れてしまったー…」
「目が生き生きしてるよ」
「………」
隣で手助けしていた#name#がいつにも増してニコニコと笑みを浮かべていて。
隣に居るだけでもかなり近いのに、#name#は更にオレの顔を覗き込むように接近してじっと目線が重なる。
その頬はほんのり紅くなっていて、オレと同じく多少の緊張感があるように思えた。
目が合った瞬間、ふと感じたことがある。
#name#に対する気持ちはこの川のようだと。
浅瀬だったら、もしかしたら引き返せたかもしれない気持ち。
しかし、#name#と一緒に居れば居るほど彼女への思いはどんどん増していく。
ちょっとした仕草も表情も笑顔も、彼女の全てをオレだけが一人占めしたい。
自分が思っている以上に#name#のことで頭がいっぱいで、もうどうにもならないほど深みに嵌まってしまっている。
川や海と同様に、溺れたら戻れない。
「#name#」
「なに?……わ…っ!?」
#name#の可愛い顔がすぐ近くにあることが照れ臭くて、オレは水を掬って彼女にそれを浴びせる。
水飛沫はすぐに#name#へと届き、あっという間に髪や顔、衣服などに散らばった。
普通の女性なら、突然このようなことを至近距離でされたら多少は嫌な思いをするだろう。
だが#name#は全く怒る素振りも気配もなく、ただただ目を丸くして驚いていて。
少し経ち、わざと頬を膨らませるその姿がとても愛しい。
そう、オレはもう彼女と離れてはいられない。
周囲に穏やかな風が吹いて#name#の髪を優しく揺らし、そんな彼女の少し濡れた髪に手を伸ばした。
親指と人差し指で軽く束を作り、それを自分の指先に巻き付けて遊んでみる。
サラサラした髪質のためすぐに指から解けて彼女の方へと戻ったが、それを終始見ていた#name#はオレの行動に赤面していた。
「#name#は本当に可愛いな」
「ク…クラピカ…」
「もしもーしお二人さん」
「オレたちも居ること忘れてんじゃねーか?」
「#name#とクラピカは仲良しだね!」
「ゴン、そういうことじゃねーだろうが!」
「えー!いいじゃんホントのことなんだし」
完全にオレと#name#、二人だけの世界に入り浸っていたが、ゴンたちの声で現実に引き戻される。
申し訳ない話だが、完全に3人の存在を忘れていた。
もう一度#name#の方に目を向けると、レオリオたちに突っ込まれたのが恥ずかしかったのか、更に顔の赤みが増している。
#name#のそんな顔が可愛くてもっと意地悪したかったが、また彼等に茶化されると思い惜しみつつ断念した。
そして二人の時間を邪魔してくれた3人にまたしても水をかけて、自分の残念な気持ちを発散する。
5人の周りにはそれからもたくさんの水飛沫が飛び散り、太陽の光が反射してとても光っていた。
青薄
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