お仕置き×名前×ご褒美
ノストラードファミリーに所属し、色々な経験と苦難もあったが、今は若頭として組を束ねている。
仲間の目を少しずつ取り戻しつつ、組織としても再建を建て直している日々を送っていた。
事務所はさほど新しいわけではなく、多少の劣化なども見られるが必要最低限の設備は整っており、事務処理などをするのに困ることはない。
それに何より、我々が業務をするこの事務所を綺麗に掃除してくれる人物が居るからだ。
週に4〜5日ほど、この事務所を仕事で掃除をしに来てくれる女性、#name#。
小柄で話すとのんびりとした感じだが、仕事中はテキパキと動いて事務所内を綺麗にしてくれる。
「#name#、いつも綺麗にしてくれて本当に助かっている」
「本当ですか?ありがとうございます!若頭さまからそう言ってもらえるとやる気が出ます!」
「そうか…」
若頭として、そして一人の人間として、いつも真面目に仕事をしている彼女に礼を言う。
本当に良く仕事をこなしてくれて申し分ないのだが、一つ気掛かりなことがある。
オレは今まで#name#に名前で呼ばれたことがない。
彼女を雇用してから日が浅いわけではなく、少なくとも半年以上は経っている。
もちろん半年という期間は、過ぎてみれば短いという者も居れば長いと感じる者も居て、それば個々の感覚によって多少は違うだろう。
だが、特にそこまで会話する仲ではなくとも、さすがにそろそろ名前で呼んでほしいと思っている自分が居て。
#name#はこの事務所で仕事を始めた日から変わらず固い。
誰に対しても敬語を遣い気も遣い、オレ以外の者には名前にさん付けをして呼んでいる。
これも固いといえばそうだが、ちゃんと名前で呼ばれるだけ羨ましい限りだ。
…なんとかオレも名前で呼んでくれないだろうか。
「…#name#」
「はい若頭さま!なんでしょう?」
「その…"若頭さま"と呼ばれるのはあまり好きではない。出来れば名前で呼んでほしいのだが」
「えっ…?い、いえ…私という下っ端が若頭さまを名前で呼ぶなんてことは…」
「#name#…」
「…っ!?わわ…っ?!わ、若頭さま…っ」
思いは口に、と誰かが表現していたような記憶があり、オレはその記憶に従うように彼女へ問いかけてみる。
だが#name#は頑なに名前で呼ぶのを拒み、見事に撃沈。
しかしそれに落ち込んではいられず、オレは半ば投げやり的な気持ちになり彼女をゆっくり、しかし確実に壁へと追い詰める。
さすがにいつもと様子が違うことに気が付いているようで、オレから出ているオーラが怖いのか、オレが前に進めば進むほど#name#は逆に後退していった。
当然このやり取りは永遠に続くはずもなく、やがて#name#の背中は壁にぶつかってしまう。
背中と壁が隣り合わせになり、一瞬だけ#name#の意識が壁の方に向いた。
その隙を見逃すほどオレは甘くない。
壁に両腕を肘までついて#name#を囲み、出られないように拘束する。
僅かな時間でもオレと目線を外したことを後悔したのか、#name#は顔を強張らせながら再度オレを見た。
これから何をされるか分からない恐怖で体を微かに震わせ、瞳もどことなく潤んでいる。
それはオレの欲をこれまでにないほどに高め、壁に肘をついたまま、彼女のほんのりピンク色に染まった唇に自分の唇を押し付けた。
「ん…んん…っ?!」
「…ん…、#name#…」
「若……、ん…ふ……っ、」
突然のキスに目を大きく開けて動揺する#name#だが、彼女のすぐ側にはオレの両腕が構えていて逃げ出せない。
そうなるとオレにされるがまま。
驚きと戸惑いこそ感じられるが嫌がっている素振りがなかったため、幾度か口付けを交わしたあと力強く彼女を抱きしめる。
#name#の体からは石鹸の香りが仄かに漂い、いつも以上に女性独特の色気があるように思えた。
キスに酔ったのか、今の#name#は体に上手く力が入らないようでオレが抱きしめて支えている状態。
口付けによって奪われた酸素を少しずつ取り戻している。
そんな彼女に悪いとは思いつつ、オレは#name#を両腕に閉じ込めたまま何度か知らないキスをし続けた。
苦しそうな顔をしても止めてやれない、むしろもっと長く断続的にしてオレで頭をいっぱいにしてやりたい。
「……っ、…は…っ、若、頭さま……」
「クラピカだ」
「…っ」
「良いことを思いついた。若頭と言ったらその分だけまたキスをしよう」
「え…えぇ…!?」
「そうすれば少しは名前で呼ぼうとするだろう」
#name#をキスの雨から解放し、なかなか呼んでくれない彼女に一つ提案を持ち掛けてみる。
我ながら子供染みているというか、なんとも意地悪な発案だと思ったが、ここまで強固にオレの名前を言わない彼女にはこのくらい強制力がないと厳しいと悟った。
未だにオレの腕の中に居る#name#はオレの考えた案にとても困惑した様子で、口を金魚のようにパクパクさせている。
…さぁ、#name#はどう出るか。
これで少しは名前で呼ぶ癖がつくようになればいいのだが、人間は言われたからといってすぐに欠点や習慣づいたものを直すのは難しい。
もちろん、だからこそ敢えてこのような難題を開示した。
#name#は恥ずかしそうに目線を下に向け、オレのスーツの裾を非力な手で握る。
「ク、クラ…ピカ…さん……」
「…よく出来たな」
「あの……、ん…っ」
「ご褒美だ」
ようやく#name#の口から聞けた、自分の名前。
本音を言うと呼び捨てが望ましいが、さすがにいきなりは無理だろう。
少なくとも若頭さんと呼ばれることは減るはず。
呼んでくれたことが想像以上に嬉しくて、そしてどこか気恥ずかしい気持ちもあって、それを悟られないように#name#の頬にキスをした。
そう、若頭と呼んでも名前で呼んでも口付けをする。
ずっと#name#のことが好きだったのだから。
お仕置き×名前×ご褒美
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