Sleep Time


アルコール02


レストラン会場を後にしたオレと#name#は彼女の部屋の前まで行き、ドアノブを回して部屋に入った。
飛行船に備え付けのベッドにゆっくりと寝かせ、#name#の体が冷えないように上から掛け布団をかける。
水を飲ませた方が良いかとも思ったが、随分と深い眠りに入っているようで気が引けてしまい、彼女が起きるまでそのままにしておくことにした。

本来なら#name#を自室まで運んだ時点で部屋を出て行っても良かったのだが、起きた時に体調が悪くなることも考え彼女が起きて健康状態を確認してから退席することに。
何かあってもすぐに対応できるようベッドの端に浅く腰をかけ、静かに彼女が起きるのを待つ。
部屋にある時計の針が規則正しい速度で動き、その1秒1秒の音がやけに落ち着きをもたらしてくれた。
顔を#name#の方へ向けて彼女を見ると、相変わらずよく寝ている#name#の姿。
その無防備な顔に自分の理性は敗けそうになる。



「#name#と二人になって自分で居られなくなるのが怖いんだろ?」




…先程キルアが言った通りだ。
#name#と二人きりになるのは嬉しい反面、自分がどんな行動を移すか分からないため恐怖しているのも事実。
目を閉じ、自分の両手を交互に絡ませながら理性の糸が切れないように深呼吸を何度も吐いた。

だが、呼吸を整えれば気持ちを幾分かコントロール出来ると思ったのにあまり変わらない。
それほどまでにこの空間に漂う空気が張り詰めているのか。
時計の音しか聞こえない、静かすぎるほぼ無音状態の部屋。
好意を抱いている張本人はアルコールのせいとは言え、オレの気持ちなど知らずに夢の中。



「う〜ん……」
「#name#?」
「あれ、クラピカ…?」



一人で悶々と考えていると、後ろから愛しい女性の声。
かなり眠りが深そうな様子だったためにしばらく目は覚まさないだろうと思っていたが、意外なほど早い起床だった。
起きたとはいえまだ起きたてだからか、重たくなっている瞼を指先で刺激して眠気を覚まそうとしている。
#name#にとって瞼を擦ることは大した行動ではないのだろう。
おそらくまだ眠くて反射的にとった動作なのかもしれないが、オレにとってはかなり心臓が脈打つのを感じたものだ。
こういうのを無意識でやられるから困る。

軽く#name#の全身や顔を見るが、特に身体的異常も意識障害なども見られない。
そのことに安堵したオレは自分の役割を終えてこの部屋を出て行こうとするが、何故か体が動かない。
もちろん#name#が制止しているわけではない。
オレの体がまだこの場に留まりたいと訴えているのか、抑制しているものは何もないのに動けない、動かない。
#name#は上体だけを起こしてオレを見ていて、オレはその目線が逸らせないでいる。
夢と現実の境目に居るのか、彼女の瞳はいつものようにハッキリしていない。


まだ重い瞼と完全に戻って来てはいない意識。
…今、#name#にキスをしたら彼女はどんな反応を示すだろう。
念願の#name#と二人きりという状況に心を踊らせているのか、オレの願望は男としての性を感じさせることばかり。
"#name#と二人になると自分で居られなくなる"
それはある意味で正解、ある意味で不正解なのかもしれない。
皆の前で普段見せているオレが偽りだとしたら、彼女と居る時の自分こそが本来の自分ともいえる。

今だけは二人、部屋も鍵をかけたために誰も入って来れない。
これまでの作っていた自分を捨て去り、本能のままに動くには絶好の機会。
しかし、#name#を悲しませる恐怖と微かに残っている理性がオレをなんとか踏み留ませている。
だがそれも一瞬で切れかかってしまい、オレはまだ寝惚けている#name#にゆっくりと顔を近付けた。



「…#name#」
「う〜ん…?」
「………好きだ」
「ん〜…、んん…っ、」



やはりまだアルコールの影響からなのか、起きても眠くて仕方がない様子。
それを良いことにオレは自分の気持ちを独り言のように呟いたあと、彼女の唇にキスをした。
最初は軽く当て、そこで離れれば良かったが欲が出てしまい更に強く唇を押しつける。

#name#の頭に手を回して引き寄せたら貪るような口付け。
これだけ激しいキスをすればさすがに目も頭も覚ますかと思ったが、効果は今一つのようだった。
初めてのキスだったが、残念ながら愛しい人の反応は薄い。
まさかの展開に思わず苦笑してしまうが、嫌がられるよりはいいか、と自分を慰める。
少し長いキスを終えて唇を離し、何が起こったかよく分かっていない#name#の頭を軽く撫でた。


起きたもののまだアルコールが抜けていない#name#。
#name#がこの様子だとレオリオの方も介抱が必要だろう。
レオリオはゴンとキルアに任せるとして、こちらもまだ彼女を一人にさせるには些か不安が残る。
やれやれ…と、嬉しさが混じった溜息を洩らし、もうしばらくここに居ることにした。





アルコール



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