再会
背筋にゾクッと寒気が走り、オレは顔を上げて#name#を見る。
そこには先程よりも強く、目尻に皺が出来るくらいに目をギュッとつぶり、頬を赤くさせて涙を流す#name#の姿があった。
その表情は苦痛と悲痛そのもので、オレはこの時になってようやく己の犯していることの重大さ、身勝手さを思い知る。
今している行為は#name#の心も体も傷付け、泣くほど嫌でつらいものだということ。
最愛の人の悲哀な姿を目にし、これまで膨れ上がっていた欲は急速に落ち着きを取り戻す。
どうすればいいのか混乱するが、今までしてきたことを考えても彼女を抱きしめるなんてことは出来ない。
錯乱する頭の中、せめてオレが出来ることと許されることは、乱暴に晒してしまった彼女の体に布団を被せることだけだった。
「うぅ…クラピカ…、ひどいよ、私の気持ちも聞かないで一方的にこんな…っ」
「…#name#、すまない」
「う…っ、」
「…本当にすまなかった」
部屋には#name#の泣きじゃくる声が響き、オレはただひたすら謝ることしか出来なかった。
それ以外、オレに出来ることがあるだろうか。
抱きしめることも許されない、もう触れることも許されない。
何度も謝罪して、ここから立ち去った方がいいと判断したオレは、ベッドから降り立つと扉まで歩みを進めようとする。
が、進もうとした方とは真逆の方から、スーツの一部が引っ張られるのを感じた。
スーツがどこかに引っ掛かったという感じでもなさそうだったため、考えられることは一つしかない。
「まさか」と思いつつも、扉へ行くのを阻んでいる原因を知るために後ろを振り返る。
そこには想像していた通り、布団で肌を隠している#name#がもう片方の手でオレのスーツの裾を握っていた。
相変わらず目をつぶっていて、流した涙が頬を伝って落ち、布団に染みを作っている。
傷付けた本人がこんなことを思うのはおこがましいが、#name#の泣いているところを見るのはとても心苦しく、出来ることなら今すぐ駆け寄って抱きしめてあげたい。
しかしそれは許されないこと。
抱きしめたい気持ちとここから早く出たい気持ちで葛藤し、#name#を見ないように目を逸らすしかなかった。
「…………」
「クラピカ…行かないで…っ」
「………っ」
「こっち、来て…」
「#name#…」
先程とは違った#name#の言葉に戸惑いつつ、彼女の望み通りにまたベッドへ戻って隣に座る。
オレの理性が切れた原因の香りがまた鼻を掠め、せっかく安定していた精神がまた疼いてしまった。
だが今回は荒れそうな気持ちを必死に抑え、もうこれ以上#name#を悲しませないように徹底する。
沈黙が続く中、自分の両頬が#name#の手によって包まれ、そのまま#name#は恥ずかしそうにオレの唇に自分の唇を触れさせた。
数秒ほど、目の前で何が起こっているか、#name#がオレに何をしているのか分からなくなり、完全に思考が停止する。
唇と唇が離れ、先程よりも更に顔を赤く染めている#name#の様子を見て、自分が何をされたのかようやく理解できた。
#name#がオレにキスをしたという事実に驚きや嬉しさ、戸惑いや愛しさなどが一気に沸き上がり、しかしどういう顔をすればいいか分からず手で口を抑える。
「#name#…」
「私も、クラピカが好き…」
「っ、」
「でもさっきのクラピカ、自分のことばっかりで私の言うこと聞いてくれなかったから」
「…………」
「嬉しかったのに悲しかった…」
「…すまない」
#name#の本心を聞いて安堵と嬉しさに満たされたオレは、彼女の華奢な体をなるべく強い力が入らないように抱きしめた。
今度は怖がらせないように優しく、そして自分の気持ちを伝えるようにしっかりと。
気持ちに応えるためか、#name#も両腕でオレを抱き返してくる。
その行動が嬉しくて、抱きしめていた腕を弛めて目の前に居る#name#を見ると、彼女もオレを見てくれて微笑んだ。
笑った顔がとても可愛らしく美しく、咄嗟に#name#の顎を片手で持ち上げて口付けをする。
#name#はそれを受け止めてくれてゆっくりと瞳を閉じた。
あんなに我慢したはずなのに、#name#の気持ちを聞いてまたキスを交わせるようになって。
内に秘めた欲の渦がまた激しくなり、オレは羽織っていたスーツのジャケットを脱ぎ捨てた。
#name#もオレがこれからしたいことを理解したのか目を伏せて俯いてしまったが、そこには先程のような抵抗や悲嘆といった否定的な姿は見られない。
あまり衝動的にならないよう、また嫌な思いをさせないよう、#name#の肩を掴んで徐々にベッドへ押し倒す。
そして締めていたネクタイに片手を伸ばして緩めて外し、そのまま手は#name#の頬へ。
「#name#、嫌じゃないのか?」
「うん…。でも、、」
「?」
「ゴンたちが来たら…」
「そしたら取り込み中と言って出て行ってもらえばいい」
「も、もうっ、クラピカったら…」
「さすがに、もうこれ以上は待てない…」
「………うん」
オレの堪え忍ぶ姿が限界と悟ったのか、#name#もオレの頬に触れてはにかむような笑顔を見せる。
それが合図のように、オレも#name#もお互いの体を求め合った。
再会(後編)
- 7 -
*前次#
ページ: