初めての雑談
ハンター試験になるためにはまず試験会場に行かなくてはならない。
まずは指定されたザバン市まで行くため、船でドーレ港まで向かう必要があった。
その道中、ゴン、レオリオ、#name#と出会う。
船長にハンター志望の動機を訊かれ、そこでオレとレオリオが対立して戦闘になるかと思いきや、天候不良で船や人に損害が出てしまいそれどころではなくなった。
そこで戦うはずだったレオリオの意外な性格を知り、互いのことを認めて謝罪し4人で会場まで旅をすることに。
数時間前はかなり荒れていたというのに、今ではすっかり青空が広がり、カモメも気持ち良さそうに空を泳いでいる。
どうやらドーレ港に行くまでは、また先程のような悪天候に見舞われることはないだろう。
港に到着するまではまだ4〜5時間ほどかかるため、船の機体に腕を乗せてのんびり海を眺めることにした。
おそらく、会場に着いたらこんな穏やかになれることなんてないだろう。
ハンター試験には強者達が勢揃いと聞いた。
だがどんな猛者が来ようが、オレは必ずハンター試験に合格する。
そして一族を虐殺した幻影旅団を捕らえる。
家族を、一族を、親友を奪った奴等を絶対に逃さない…。
「…ーピカ、クラピカ?」
「…っ!!」
完全に一人の世界に入っていたようで、何度も自分の名前を呼ばれるまで気付かなかった。
横に立ってオレの名前を連呼していたのは、先ほど知り合ったばかりの#name#。
初めて会った時からよく我々に笑いかけてくれる、笑顔がよく似合う女性。
確か…さっきはゴンと話していた記憶があるが、わざわざこちらに来たということは、何か大事なことを言いに来たのかもしれない。
「…すまない。考え事をしていた」
「あ、ううん。私こそごめんね、一人で居たかったかもしれないのに…」
「#name#が謝る必要はない。…それで、何かあったのか?」
「えと、特に何もないんだけど…なんとなくクラピカとお話したくて…」
「…私と?」
#name#の口から出たのは意外な言葉だった。
てっきりまた船長から試験への質問でもされるのかと思ったが、まさか彼女の好奇心だったとは。
正直、自分のような心を閉ざし気味の人間と会話をしても面白くもないと思うが、それでも気にかけてくれたのはなんとなく嬉しいような気もする。
まだドーレ港に着くまで時間はある。
それまで#name#と話して親睦を深めるのもいいかもしれない。
オレが"話そう"と言うと、#name#はとても嬉しそうな顔をして喜んでくれた。
ーーー…
ーーーー…
ーーーーー…
どのくらい話したかわからないくらい、オレと#name#は互いの趣味や故郷のこと、これから始まる試験のことなどを絶え間なく話す。
故郷のことを話すとどうしても伏し目がちになってしまったが、#name#はオレを気遣ってか、自分の国のことを話したりしてクルタ族の内情を話そうとするのを避けた。
表情からして、本当は事件の経緯など訊きたいのだろうなとは思う。
ただオレの顔色もよく見ていて、それが無理に踏み込まない理由なのだろう。
明るい性格だがそういうところにも気を配れる、観察力が鋭い女性。
きっと#name#はとてもいい環境で育ったのだろう。
だからこそ、彼女には自分の詳しい生い立ちはあまり話したくない。
オレの過去も、オレがハンターになってからしようとしていることも、#name#にとっては聞いても辛くなるだけだろう。
「クラピカはきっと私の国の食べ物好きだと思うんだ」
「ジャポン、か…」
「けっこうさっぱりした食べ物が多いんだよ。例えば"スシ"とか"サシミ"とか」
「スシ…サシミ…」
「それらを一括りすると"ワショク"っていうんだ」
#name#の故郷の話を聞き、オレも自分の一族のことを思い出して懐かしく、そして辛く感じたのが表情に出てしまったのか、唐突に#name#は話を逸らすようにジャポン国の食べ物の話を始める。
…思い出した。
ジャポン国といえば、オレが昔、外へ出るための試験で参考文献を漁って猛勉強した国。
他の国と違い、たくさんの文字を頭に叩き込むのに苦労した苦い思い出がある。
確か"ジャポン語"、"カタカナ語"、"カンジ"などを多様に遣って文章を作った記憶があり、その遣い分けが難しかった。
これを当たり前のように遣っているこの一族はかなり頭脳明晰だと感服したものだ。
そしてこの国のもう1つの特徴は、この民族はとても律儀で礼儀正しく、争いを好まない。
対立を避けるためか意見を合わせる傾向があり、あまり感情を表に出さない。
相手への配慮もあるとても温厚な種族。
まさかそのジャポン国の人にこんなところで出会えるとは思わなかった。
おそらく#name#の気を遣う性格はジャポン国の特徴そのものなのだろう。
まだ1時間弱しか話していないが、不思議と#name#と話すのはとても楽しい時間だった。
それと同時にジャポン国への関心が非常に高まる。
「…行ってみたいな」
「え?」
「#name#の国に」
「え!本当に?興味持ってくれたの?」
「あぁ。その"ワショク"とやらも食べてみたいな」
ジャポン国への気持ちを話すと、#name#はかなり嬉しそうな顔をしていた。
オレが#name#の国に関心を持ったのがよほど嬉しかったのか、ゴンたちの方へ行くと言って走ってこの場から離れていく。
その喜びに満ちた背中を見ながらなんとなくだが#name#のことを天真爛漫で可愛らしい子だなと思い、オレ自身も頬が緩むのを感じた。
初めての雑談
- 8 -
*前次#
ページ: