嫉妬
ハンター試験も四次試験が終わり、最終試験会場まで飛行船で体を休めている。
最終試験の場所へ到着するのは天候にも左右されるようだが、およそ2〜3日はかかるようだ。
さすがに四次試験は今までの試験の中でも苦難を強いられ、ゴンのおかげでオレとレオリオはクリア出来たといっても過言ではない。
これから始まる最後の闘いを考えながら空を眺めていると、船内にアナウンスが響き渡る。
どうやら最終試験前に、ネテロ会長と一対一での面談があるとのこと。
何名かが呼ばれたあと自分の番号も呼ばれ、10分ほど軽い質問に答えて退席した。
質問されたのは"ハンター志望の動機"と"注目している人物"、そして"戦いたくない人物"というもの。
この問いに何の意味があるか分からなかったが、隠す必要もなかったため全て正直に答えて面談はあっさりと終了した。
部屋を出て船内を歩いていると、近くで男女の会話をする声が聞こえてくる。
男の方は憶えがない声でゴンたちでないことは分かったが、女性の声はすぐに#name#だということが分かった。
ゴンたちなら話をしていてもなんの問題もないが、そうでないのなら少し引っ掛かる。
最終試験前にライバルの敵情視察をしているのか、あるいはライバルを潰すことが目的で近付いている可能性だってある。
声がする方へ音を消して近寄り、死角に身を潜めて様子を伺うと、やはりゴンたちではない受験者と#name#の姿があった。
男の受験者は53番の受験ナンバー、名は確か…ポックル。
内容はよく聞こえないが#name#も男の方も争っている感じは見受けられず、むしろ親しげに談笑しているようにすら見える。
#name#のことが好きなオレにとってその光景はとても耐えられないもので。
自然と二人がその場を離れるまで待てば良かったのかもしれないが、#name#が捕られるかもしれないという焦りと怒り、そして嫉妬心がそれを許しはしなかった。
「彼女になんの用だ」
「?アンタは確かこの子と一緒に居る仲間か。何って普通に話してただけだ」
「悪いが試験前にあまり仲間以外との関わりは持ちたくない。お引き取り願いたい」
「…アンタに話しかけてたなら話は分かるが、俺が話してたのはこの子だぜ。他人にどうこう言われたくないな」
「彼女は私の仲間だ。それ故、知らない他者から仲間を守るのも当然だ」
「……屁理屈なヤツだな」
「???」
我慢しきれなかったオレは死角から出て二人の前に立ち、男へここから去るように促す。
向こうもいきなり二人の時間を邪魔されて少しばかり感情を昂らせたが、試験前に個々での衝突は失格の可能性もあり早々にこの場から離脱した。
残ったのは#name#とオレの二人だけ。
何が起こったのか、なぜオレが急に現れたのか理解できていない#name#はただ左右を見返してオロオロしている。
唯一いま解ることはオレが怒っていることくらいか。
「あ、あの、クラピカ…?」
「#name#、君はもう少し他人を疑った方がいい」
「え…」
「これから戦う相手に愛想を振り撒く必要があるのか?近付いて殺すのが目当てかもしれないんだ」
「でも…っ、ポックルくんはそんな人じゃないよ!」
「……………」
先程の男を警戒しなければならないと説くが、#name#は理解していないのか疑いたくないのかオレの発言を否定する。
何より驚いたのが、#name#が彼を"ポックルくん"と友好的な呼び方をしていたこと。
オレの面談が始まるまで、#name#はゴン、キルアの3人で話していたはず。
面談は10分ほどで終え、彼と会話していたのはどんなに長くてもこの10分余り。
そのたった短い時間の中で、"くん"付けで呼ぶくらい仲良くなったのだろうか。
#name#に出会ってからまだ日は浅いが、誰にでも分け隔てなく話せてしまう彼女の性格が、こんなにも憎く感じてしまうことになるとは思わなかった。
何を話していたのか。
会話中、奴に触られたりしなかっただろうか。
…オレと話すより、彼と話している方がいいのか。
色々な不安や焦りが頭の中を交差し、どんどん良くない方向へと考えてしまう。
「#name#はヤツが好きなのか?」
「??そうじゃないよ。でも優しくしてくれたから…」
「…だから隙だらけだというんだ」
「クラピ…カ…?わわ…っ、…ん…っ?!」
#name#の言い訳じみた反論に苛立ちを隠せなくなったオレは、彼女の腕を思いっきり引いて自分の腕の中へ閉じ込める。
そして#name#の左頬に手を添えて、彼女の唇に自分の唇を重ねた。
いつ受験者やハンター協会の人間が通ってもおかしくない場所でこんな淫らなことをするとは、オレもついに理性がなくなったか。
だが、誰かに見られたとしても止めるつもりはない。
…むしろ見せつけてやりたい。
#name#はオレだけのもの。
だから#name#もオレだけを見ていてほしい。
独り善がりな考えを頭の中で描きながら、苦しそうに息遣いをしている#name#を無視して何度も口付けを交わす。
唇だけでは足りずに頬や額、首筋、鎖骨にもキスをして自分なりの愛情表現を施した。
こんなにオレは彼女に対して想いを行動に移しているのに、鈍感な#name#には殆ど伝わないだろう。
虚しい気持ちを抱きながらも唇を解放し、#name#を再度強く抱きしめる。
「…は…っ、クラピカ、なんでこんなこと…」
「"隙だらけ"だと言ったはずだ」
「だからってなんでキスまで…」
「#name#…、あまり無防備な顔を見せないでくれ」
「…?」
「でないと今度こそ…オレは君を襲ってしまいそうだ」
抱きしめていた#name#の体を離し、オレは彼女の耳元で囁くように忠告した。
その警告を聞いてようやく少しは理解してくれたのか、#name#は口を結んで頬を紅く染める。
紅潮した姿がとても可愛くて、オレはまた#name#にキスをして抱きしめた。
嫉妬
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