02

会いたくない人間に会いたくないタイミングで会ってしまうのを、日頃の行いが悪いからだなんて言葉で収められるのは些か納得がいかない。じゃあ向こうサイドの行いはどうだったのかっていう話だ。



「どう考えてもわたしより素行悪そうな顔でしょ理不尽。」

「何わけわかんねえこと言ってんのか知らねえけどお前の言い分の方が理不尽だということだけは分かるわ。」

「胸に手を当てて考えてみなさいよ。
むしろ胸に手を当てるまでもなく今の自分の姿を鏡で見てみなさいよ。理不尽でしかないから。」

「お前が逃げ出さねえなら捕まえるまでもねえんだよ。理不尽はどっちだ。」



あと俺の素行はそれなりに真面目だ。地味に気にしていたのであろう言い分は聞き流した。顔が強面なのが悪い。口に出したら更に怖い顔になるのは分かりきっている。
そんなことより、どうやってこの壁と目の前の男とのサンドイッチ状態から抜け出すかだ。
顔の横に付けられたがっしりとした腕は、しゃがんだ程度では到底潜り抜けられる檻ではなかった。
思案している間にぐっと近付いてきた顔に一瞬怯むと、それを阻むかのように陽気な声がその場をすり抜けた。



「廊下で壁ドンなんてしてたら他の人が通りにくいでしょ、宗介。」

「……貴澄。」



何でここに、と顔に書いてある宗介ににこりと笑いかけて久しぶりだねなんて話し掛けながら、当然のように檻の中からわたしを引っ張り出すその行動の真意が読めなくてじっと顔を見つめると、何故か思い切り頬を引っ張られてしまった。



「いひゃいいひゃい、きふひはなひて!」

「ドリンク取りに行ったままなかなか帰ってこないから心配して見に来た貴澄君に何か言うことは?」

「またへてごめんなひゃい、はなひて!!」

「んー、何言ってるか良く分からないなー。」



理不尽この上ない。何なんだ今日は。
何とか離してもらった頬が取れてやいないか触って確かめていると、宗介から心底呆れた視線をいただいた。元はと言えばお前のせいである。



「儘ならない……。」

「馬鹿なこと言ってないで早くドリンク取りに行ったら?」

「貴澄が冷たい。酷い。」

「はいはい帰り道傘なしで帰るように。」

「わー!うそうそ貴澄君超優しいなー!おっとこまえー!!」

「もういいから早く行きなよ……。」



疲れたような声で返す貴澄と強張った顔の宗介がその後何の話をしていたのかは分からないけれど、ドリンクを持って元の廊下を戻る頃には宗介はいなくなっていて、ただ一人、貴澄が部屋に戻るでもなく壁に背を預けてわたしを待っていた。
宗介からの伝言は「話したいことがある。また連絡するからブロックは解除しとけ。」だそうだ。貴澄は、それが何の話なのか、聞いたりしたのだろうか。
いつもと変わらない様子で話す貴澄に、何を考えているのか、よく分からなくなった。





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