ひとつ、ふたつ、みっつ。
指折り数えて飽きた。

真っ赤なお月様が私を照して、手にした刀から滴り落ちる名前も知らない女の血で濡れた地面はぐっしょりしている。


(43…)


ぱっくりと割れた肉から今も血が飛沫を上げて尚も体を紅く染めていく。
恐怖に見開かれた目が私を捉えている。が既に生き絶えた目など恐ろしいとも思わない。纏め上げられた髪を鷲掴み首に刀を宛て、スルリ、と引けば簡単に頭と体が離れ体がドチャリと音を立てて倒れた。


「ごくろーさま」

「……」

「やだなあ、そんな顔して。僕だって傷付くよ?」

「あと一人ですよ。」

「え?ああ、そうだね。最後の一人は忍術学園に居るよ」

「忍術学園…」

「気を付けてね?そこは忍者を育成してるところだから今までみたいにはいかないよ?」


ふわりと現れた男は自称神様。全ての始まりはこの男から。平和に生きてたのに気付いたら死んで時代を飛んでここに来ていた。そこでこの男とある約束をした、そう、ある女たちの首を集める。全ての首を集めたら私は向こうでまた暮らせるらしい。家族を遺した私は二つ返事で了承し刀を手にしたが如何せん人の命を奪うのには慣れない。だが殺らなければ帰れない。
目の前で笑う神に今しがた切り取った首を投げ付ける。


「私は何をしてももとの世界に帰るんです。」

「へえ。ちなみに最後の女は学園で天女と称され崇められている。異様な執着だよ。まあ頑張ってね。」

「…ふぅん、そう。」


くすりと笑う彼の横をすり抜け最後の女の元へと向かい歩き出す。


「君に神のご加護がありますように。」

「下らないですね。」

「君が負けないのを祈るよ」

「いやな言い方。」


横目で彼を捉え、返事も録にせず道を走り忍術学園という場所を目指す。
これで私は帰れる。そう簡単に思っていたわたしを誰か殴り飛ばしてくれないだろうか。



***



いざ忍術学園に来てみれば敷居をまたがずともわかる。今まで味わったこと無い気持ち悪い何かが私を包み込む。
事務と書かれた札を胸に貼り付けた男に学園に着くなりある老人の前に差し出され、その老人の横を二足歩行の犬が茶を差し出すために歩み寄ってくる。


「そなたの名を、お聞かせ願えんか」

「なまえ」

「左様か、なれば貴女がこの学園を救ってくださる者ということか」

「救世主?何それ。この学園にいるある女の首を貰いに来ました、隠すようなれば切り伏せる。」

「…天女は食堂におる。伝蔵、半助、彼女を天女の元へ」


シュタ、
天井から降りてきた二人の忍者につい反射で刀に手をかけ威嚇体制をとってしまった。
申し訳ないと謝り二人に連れられるがまま天女とかいう女の元へ向かうが食堂を見て絶句。

ああ、関わりたくない。

こいつを殺さなければ私は帰れないというのに色とりどりの忍者が一人の女を取り囲んで鼻の下を伸ばしていたのだから。



(こんにちは天女サマ)(貴女はだあれ?)(私は貴女の敵ですよ)

貴女方からしたら死に神です。

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