有給休暇が気付いたら凄く溜まっていたようで上司から消化しといた方がいいんじゃないか?と有給取っていいよと許可を頂いたのでこれ幸いと只今京都に来ております。本当だったら京都に住んでる友達と合流して今頃友達の案内で観光楽しんでた筈だったんだけどなあ。そんな友達はお仕事が入ってしまったので連れてってくれる予定だったカフェやら神社やショップをマップにして送ってくれた。優しいね。


「ひえー!めちゃんこさむいよー!」


思った以上の寒さに一人での旅行は心身ともに堪えるものがあるのを知った。こんな一人旅も最終日です、今夜私は東京に帰るのです。今度来るときは是非とも友達とキャッキャしながら観光したいと強く思います。
友達のマップの通りにあれこれ観光してちょっとお茶したいなと思った時、マップでも次の行き先がカフェであり友達の先読み能力の凄さを感じながらもお店に入り友達お勧めのメニューを見ればこのくそ寒い時期にパフェと書いてあったのには目が点になった。お店のメニューをパラパラと見るとお店のお勧めもパフェだった。どうせ来たのならお勧めを頼んだ方がいいだろうとコーヒーと共にパフェを頼んだら出てきたパフェに感動。なにこれえ〜〜!!チョコミント大好きな私の為にリサーチしてくれたのか何から何までチョコミントのパフェ。トッピングされてるゼリーもクリームもミント味。ちょっと苦味のあるココアクッキーがまた美味しい。なにこれえ〜〜!最高じゃん。幸せを感じつつ次の行き先を確認するとラーメン屋。え、また食べるの?こいつ私の胃袋底なしとか思ってんじゃないのか。


***


あれから友達お手製のマップは完全無視をしてその辺をぶらり旅して数時間。とても楽しい時間を過ごせたと思う。
神社は自宅の近くもあるので通勤する時必ず手を合わせるため作法はなんとなく分かってはいるけれどお寺の作法がちんぷんかんぷん過ぎて住職さんに聞きまくりである。あまりの知らなさに住職さんの苦笑いっぷりったらない。世間知らずでごめんなさいね。これから勉強しておきますので許してください。

最後に来たのは縁切りで有名な神社で冬のこの時期18時になるとあたりは真っ暗闇でその為か人の気配なんてなく私だけだ。もちろん街灯はあるけれど流石神社、かなりの雰囲気です。お化け信じてる私としては本当ちびりそうである。


「悪い縁が切れますように!悪い縁が切れますように!!良縁来い!頼むから!」


ガランガランと鈴を鳴らして眉間にシワが寄る程に力み切願する。同僚や同い年の友達はみんな結婚していってしまい残されたのは悲しきかな私だけ。私と言えば誰もが認めるダメ男ホイホイなのだ、それか付き合えば必ずダメ男になる。縁切り云々である。むしろ私の体質なのだろうか、普通の人とお付き合いして結婚したい。

私以外居ないのをいいことに神さまにお祈りしていると突然ボソボソと誰かの声が聞こえて来た。


「え。」


待って。お化け?え、うそでしょ。

つい先ほどまでお化け怖いよって思ってた矢先のこれである。もう私の頭の中にはお化け以外の選択肢がなかった、これは仕方のない事だと後からでも思う。
ダメだ、私は神社に来て呪われてしまったのだ、どうしよう。良縁を願ってしまったからか、私にはダメ男がお似合いだという事なのか。


「ここで何してやがる。」

「いぎゃあああ!!!ごめんなさい!身の丈に合わない良縁願って本当ごめんなさい!!!!私なんて一生結婚出来なくても構わないので呪わないでください!!!!本当ごめんなさいいい!!!!」

「黙れ。黙らねえなら殺す」

「ヒェ……」


縁切り神社来たのにこんなすぐ様縁切りたい人に出会うと誰が思いますか。振り向けば暗闇でもその形がわかってしまう黒光りするモノを手にこちらを睨みつけてくる全身真っ黒の銀髪ロン毛のでっかいお兄さんと暗闇なのにサングラスかけてる恰幅のいいお兄さんが居た。サングラスをかける意味を知りたい。

カチャリと小さな音で危機的状況に陥っていた事にハッとする。


「ご、ごめんなさい…」


私一般市民ですと両手を上げてアピールするが彼らには関係無いようで一発、銀髪のお兄さんが持っていたそれから煙が出たと思った瞬間感じる左耳からの激痛に私の涙腺は決壊した。まじめに生きてきたのになんでこんな事になんの、なんで私今日有給使ったの、自分の運のなさに殆嫌気がさす。
耳が痛い、耳が痛いよ。と地べたにへたり込んでボロボロ泣くいい大人にサングラスのお兄さんは「ア、アニキ…」と狼狽えていたのできっとこちらのお兄さんは良い人なんだろう。


「取り引き見られたんだ、生かしとく訳にゃいかねぇだろ。」

「み、見てッ、な゛いのに…!ぅ、うぇぇぇ…みみ、みみぃ…」

「……」

「まざかぁッ、この世とっ、縁切り゛ッずる、とは…ッ思って、なぐでえ…!!ヒッぐず、し、死ぬ時はあ゛ッ安楽死ってえッ決めででええぇッ…ッぅう、グズッ」


情けないにも程があると自分でも思う。
恐怖には勝てなかった。これも仕方ないと思うの分かって。
みっともなく嗚咽を繰り返しながら泣く私に多分、馬鹿らしくなったんだろう銀髪のお兄さんは結構大きな舌打ちしてソレを下ろしその場を後にした。
これは、助かったのだろうか。
彼らの姿が見えなくなって一体どれだけ時間が経ったか分からないが新幹線の時刻を思い出し立ち上がろうとすると腰が抜けていたようで立ち上がるのにもまた時間がかかってしまった。


***


時刻に追われながらもトイレの鏡で耳の出血確認やら職場の人たちへのお土産を買いあさり、そのお土産と自身の荷物を両手に新幹線の扉が閉まるギリギリに駆け込む。その瞬間に閉ざされる扉を横目に、この歳で全力疾走するとは思わなくて駆け込んですぐの所で息を整えるのに集中しお土産ついでに買ったお茶のペットボトルをカチリと封を開けて喉を鳴らし体に流し込む。


「…テメェは…」

「ッ!?…あっ!」

「……」

「うええ…うそぉ…靴が…」


多分私は本当に呪われてしまったのだ。
先ほど私の命を奪おうとした彼らが号車移動の為か通路に出てきたのだ。そんな不意打ちにこんな事されたらそりゃあ飲んでたお茶を落としてぶちゃけてしまう。なんでこういう時に限って口のでかいペットボトルなの。お陰で私のお靴はびしょ濡れです…


「縁切りしたはずなのに…縁切り…神も仏もあったもんじゃない…」


慌ててハンカチで靴を拭くけれど手遅れだと察した、革だもの。おしゃかだわ。お家に帰ったらもう捨てる覚悟をしてチケットを取り出し座席を探すことにしたけれどまだその場にいたサングラスのお兄さんが「え。」と変な声を出すから本当なんなの私何もしてないのに変な声出さないでよ頼むからあ!


「通路挟んで隣じゃねえか。」

「…つらい。」


結局東京まで私は彼らと一緒に帰った。
最終日に正直凄く疲れたけどあまりの怖さに迂闊に寝れなくてガタガタ震えてた記憶しかなかった。
この旅行で私の耳が本当可哀想だった、寒さでかじかんでた上での狙撃。もうお分りいただけてるだろう、そう、走った激痛はただかじかんだ耳に弾が掠っただけだったのだ。極限状態だったので本当彼らからしたら呆れ案件だ。

ため息ついてちらりと彼らを見たらすんごい睨まれた。
もう早くお家帰りたい。





数日後、私宛に「gin」と書かれたカードと共に真っ黒な可愛いパンプスが宅配ボックスに届いていた。







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神社の参拝は場所によりますが基本2礼2拍1礼です。
住所氏名、感謝、決意の順でお参りするそうです。

大きな所では2礼3拍1礼だったり3礼3拍1礼するそうです。
参拝だから3拍手って意味もあったりするそうで奥深いですね。

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