06
「今日寒いし煮込みうどんにしようか!オガタ、うどん食べれる?」
「馬鹿にしてんのか、うどんくらい食べられる」
「ちがうよー!好きか嫌いかって話!馬鹿にしてないよ!」
「ははあ!」
カートにカゴを乗せてガラガラと音を立てながら今夜のご飯について話し合う。二人分作るのめんどくさいから煮込みうどんでいっかなぁ!なんて思いながらポイポイ材料を入れ込んでいく。
煮込みうどんなんて久し振りに作るから手順間違ってないか後でネットで調べよう、一度手順を間違えたら最後まで間違え続ける自信ある。基本ズボラ飯しか作ってこなかったツケが今日ここで巡り巡ってやってきたのだろう。
得意料理はなんですか?と聞かれれば一番楽なインスタントラーメンを自己流でアレンジしたものになる。少し具を凝ればそれは立派な料理だよ。きっと。
カゴに食材を入れていく際に「あっ」と思い出し隣で暇そうにこちらを見ているオガタに顔を向ける。
「オガタ嫌いなものある?私ピーマンとナス」
「……ねえな」
「なにその間、絶対うそでしょ。」
「ねえよ。お前みたいに子供じゃねえ。」
「ナスはともかくオガタってピーマン知ってるの?」
「好き嫌いある時点で子供っつってんだよ、お嬢ちゃん。」
「は〜〜むかつく〜〜」
そのキメ顔ドヤ顔この短時間で見飽きたんだけど。
聞いた私が悪かったんだという事にしてカートに向き直り盛大なため息をついて歩き始める。後ろからは「でかいため息だな。」と笑う声が聞こえた。
明日の分の材料も適当に買って帰ろうと食材コーナーをうろうろしていた時に目に入ったのはシイタケ。
そういえば煮込みうどんにもシイタケ入れなきゃ、別に大したことでは無いがシイタケの袋を掴みカゴに入れたのを真顔で見るオガタに変な声が出る。突然の真顔はあかんて。笑うって。
「もしかしてシイタケ食べれないとか?」
「んなわけねえ。」
「ふーーん、へーーーほーーー????」
じゃあカゴに入れても問題ないよね?もう一袋カゴに入れると真顔だった眉間に若干皺が寄ったのを確認し吹き出しそうになるのを堪える。
入れたもう一袋はシイタケの肉詰めにして明日の夕食にしよう。もう決めた。真顔で後ろにいるオガタなんて無視だ、無視。
ついでに明日以降の数日間の常備菜用に何か買っていこうと追加でポイポイ放り込むのをオガタはただただ真顔で見つめるだけだった。
最後の最後まで真顔でカゴの中をじっと見つめるだけのオガタと共にレジに向かいお会計を済ませる。ピ、ピ、とバーコードを読み込む機械音と共に金額が増していくのを確認する。
不意にバーコードを読んでいく店員さんの手元に視線を向けて、目を見開く。
「んなッ…!?」
ちょうど店員さんが持っているソレは私が入れた記憶のないもの。どうあっても何があっても私がカゴに絶対入れる事はないものがその手にあった。
これ要らないです、と言う前にレジに通され、もう言える雰囲気でなくなってしまった。
「ははあ!」
「オガタお前かー!」
「何をそんなに怒ってんだ?お嬢ちゃん。」
「シイタケ嫌いなら素直に言えば良いじゃん!意趣返ししなくていいよ!もー!」
そう、レジを通されたのは私の苦手とするナスだ。ピーマンは多分分からなかったんだろう、ナスだけカゴに隠されて入れられていてそんな事知らない私はレジに並んでしまった。やられた…。
もう支払うしか道はない。断ることも出来るが他にも結構お客さんが並んでしまっているので穏便に済ませるには払うしか、ない。ナス食べれないのに。
レジ袋に買った物全て詰め込んでようやくお家に帰れる。そう息を吐く。
朝来た道を戻りながら先ほどのナス事件について話し合いをするがどうやらこの男はすっとぼける事を続けるらしい。
ナスが苦手なのでそんなわざわざ買って来ることがなく、どう料理していいのかも分からない。小さい頃は母親が素焼きにしていた記憶があるが食べたくない。
「ねえねえ、シイタケ私が全部食べるからオガタがナス全部食べてよ…」
「自分で買ったんだろ?責任持って食べるんだな。」
「えっまだシラを切るの?オガタ以外いなくない?誰が好き好んで知らない人のカゴにナス入れるっていう特殊な嫌がらせするの??」
「ちゃんと食べねえとつくった人に失礼だろ?」
「ねえ会話しようよ」
やれやれ、といった表情でこちらを見てくるオガタにこれ以上は話すだけ無駄と判断し私から吹っかけた物だがオガタがその気なら私にだって考えがある。今日の煮込みうどんの中にいっぱいシイタケ入れてオガタのお皿の中シイタケだらけにしてやるんだから。
密かな復讐を誓い私達はマンションのエントランスを抜け部屋に向かう中、やはりまだエレベーターは慣れないのか乗るとソワソワと視線が煩くなる。
チラリとオガタを見ると目が合った瞬間だけシャンとした。
挙動が面白すぎて笑いを堪えるのに必死なのに彼はそんな私のこと御構い無しに猫目状態のジト目でこちらをジッと見つめてくるのだ。それはもう一種の顔芸だと思う、やめてほしい。
ガチャン、と鍵を回しマンションの自室の扉を開ける。
ようやく帰ってこれたという安堵に「ふーーー」と長い息を一つ落とす。
「もう夕方だし、ご飯の支度はじめるからオガタ適当にしてなよ。」
「銃の手入れがしたい」
「窓から見えないように手入れしてね」
「ああ」
カーテンをシャッと閉めて部屋の片隅に置いてある銃を手に座り込み慣れた手つきで手入れをし始めるオガタの姿を見てから私は今夜の夕ご飯の支度を始める。
シイタケを大量にぶち込む事も忘れずに。
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