13
「………え。結局何なの?」
「貴様は神楽と行動を共にしろ。」
これはほんの数分前の出来事。
奈落が城を移す、といきなり言い出したのだ。別に移すことに反対やら賛成だのはしないが(したところで無意味)所謂引っ越しなわけで必要最低限のものは持って行く方が良いだろうと今まで下ろしていた腰を上げ支度に取りかかろうとした。
だがしかし城ごとな、と言う言葉に固まってしまった。
流石にその話にはついていけなくてどこかの魔法使いの動く城みたいな非現実的なその案を私はすんなり理解し、受け入れることが出来なかった。
そして今に至る。
「無理にも程がある。」
「この奈落に意見するか。」
「ところでこの子は…?」
「…琥珀だ」
琥珀と呼ばれる小さな男の子がなぜか私の隣でボーっとして座っていた。珊瑚ちゃんにどこか似ているその子はただひたすら地面を眺めては目を細めていた。
「琥珀くん?私なまえ。琥珀くんも奈落に連れさらわれたの?」
「…」
「奈落にいじめられてない?奈落乱暴な時があるから」
「なまえ、さん…?」
ボーッとする琥珀くんの視界にようやく入った。
お互い見つめ合う形になって気付く。虚ろな目をした彼の水晶体に映る奈落の姿があり、その奈落の腕が私の後頭部を掴もうと伸びて来るのが分かる。
アイアンクローをまたしても掛けられるのか、流石化け物とでも言えようか彼のアイアンクローは本当に痛い。目の玉が飛び出る程痛いのだ。その記憶がブワリと出てきて慌てて後ろを振り向くが奈落の視線は私ではなく、私と向かい合っていた琥珀くんに向いていた。
「かごめを殺せ」
手のひらを琥珀くんにかざしてそう命令すると彼はひとつ頷いて駆けていった。
「え、待ってよ奈落!今かごめちゃんを殺せって言った!?」
「アレは邪魔だ。当たり前だろう」
「だめ!かごめちゃんはっ!私の命の恩人なの!琥珀くん呼び戻して来るからさっきの命令取り消してっていうかまだ子供にそんな事させるなんて人でなしじゃん!ばか!」
「…だからなんだ。調子に乗るのも大概にしろ、貴様なんぞすぐにでも殺せるぞ」
「…、」
びくりと体が震えた。
「貴様も神楽のもとに行け。」
「居場所、わかんない…」
「……好きにしろ。」
黙った私にため息をつき背を向ける。一人ポツンとしている私は居づらくなり庭へと続く廊下へと足を進める。
庭に出ると手がかかっただろう植物がたくさん生えていて、庭の奥へと歩いて行くとそこには何かが埋められているかのように地面がこんもりとしている。もしかしてお宝かも!とかつい先ほど奈落に脅かされてしょんぼりしていたのにすぐに馬鹿な事を思ってしまった私を誰か止めて。
「これなに…?」
掘り返してしまったその場所は軽い鎧みたいなものと共に武器が出てきた。これはもしかしてどなたかのお墓、だったのだろうか。鎧のような物たちの他に白い物が見えた。その光景に冷や汗が出てきてすぐに土を被せダッシュでその場から離れる。
ドッドッと心臓がなる。
息切れが酷く近くにある柱にもたれ掛かるようにズルズルと腰を下ろした。なんて事だ、なんて事だ。なんて罰当たりな事をしてしまったのだろうか。墓を暴いてごめんなさい、そんなつもりじゃなかった。本当にごめんなさい。
南無阿弥陀と唱えながら手を合わせて居ると背後から肩を叩かれ変な声を出してしまった。
「何やってんだい」
「…い、いや別に!」
「ふぅん。まあ良いさ。そんな事より行くよ。」
「どこに?」
「一時非難さ。」
ピッと頭の羽を抜き手を引かれその巨大化した羽に乗らされた。話を聞くと今夜城を壊して身を隠すらしい。そんな事よりも毎度思うけれど神楽のこの羽はとても羨ましいなぁ、私も欲しいなぁ。奈落にお願いしたら私も貰えるのかな。
羽をサワサワしている私をしょうがない奴だね、と笑い神楽が話を進める。
「琥珀は珊瑚の弟なんだぜ」
「え。」
「アイツは記憶が無いんだ、だから珊瑚の事だって覚えちゃいないよ。」
「それじゃあ琥珀くんは、」
「アンタだって見たんだろ?庭の奥にあった墓を。あれはあの二人の仲間の墓だ」
「ダメだって!それじゃあお互い傷付くだけじゃん!」
「どうする事も出来ねえくせに正義感ばっかり振るうっつーのはただの偽善だぜ。アタイは自分の事で精一杯だ、だからアンタがアタイにどうにかしろっつっても手を貸すことはしねぇよ。」
二人を助けたいなら自力でどうにかするんだな、とそれを言ったきり神楽は口をつぐみ私は自分の無力さに呆れてどうする事も出来ないのかとただ脳内で自分を責めるだけだった。
不意に地上に降ろされ此処は何処なんだろうとキョロキョロ見回すと神楽がひとまず待機だ、と小さく呟いた。
「神楽、」
「ん?なんだい?」
「私は本当に何もできないし、何を言ったって行動を起こしたって偽善にしかならないけど、行動しないよりはマシだと思う。だから、ごめんね!」
「あっおい!なまえ!」
後から奈落と神楽に怒られるのを覚悟して琥珀くんを探すために走り出した。
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