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山小屋に住む老夫婦を襲撃してからあれから数日が経ち、今日まで私たちはその小屋に居座り続けた。
蛮骨曰く明日くらいには他の七人隊のメンバーも集まるそうで、何だかんだ言って七人隊全員と顔合わせするのは初めてで、その現実に痛いと感じていた胃が更に痛くなって来た。
この男一人でここまで痛いのにメンバー揃うとどんだけ痛くなるのだろうか、もしかして私の胃は無くなるのでは?考えるとゾッとする。いつか揃うと思っていたがこんな早く揃うとは思わなかった。あと一週間後くらい先伸びしないかな。


「あれ、琥珀くん?」


食器を洗う為に近くの井戸に水を汲みに来たのだがその井戸に琥珀くんはもたれかかり私を見ていた。
久々に琥珀くんを見ることが出来て荒んで居た心が一瞬にして澄み切った気がした。


「お久しぶりです、待ってました。なまえさん如何ですか?」

「明日くらいに七人隊揃うんでしょ?胃が痛くて敵わないんだけど。琥珀くんこそ元気なの?表情筋死んでるよ。」

「…凶骨と霧骨は犬夜叉たちにやられましたよ。だから七人全員が揃うわけでは無いですね。」

「蛮骨だけでかなりのキャラの濃さなのにそんなキャラの濃いメンバー揃ったら私一人じゃ無理だよ。琥珀くんも手伝ってよ。」

「俺は無理ですけど気休めに最猛勝を…。女好きな霧骨と凶暴な凶骨がいない分、大丈夫だと思う。」

「やばい奴しかいないとかない?ちなみにどんな人が居るか聞いても?」

「蛇骨は男好きで虐殺好き、煉骨は頭が良く、銀骨は機械兵人、睡骨は二重人格の医者かな。」

「私の胃が生き残れる気がしないし、唯一まともそうなのが煉骨って人くらいなのは良く分かった」

「あと、七人隊が揃う時なまえさんは白霊山に向かえとの事で。」

「え。」

「…ご武運を。」


そう強めに言って去って行く琥珀くんの背中を見て先行きに目の前が真っ黒になる。琥珀くんから残されたのは最猛勝と応援のみ。
彼から貰った僅かな情報を思い出してみたがどうも胃が日々を穏やかに過ごせる気配が微塵もしない。というか、七人隊が揃う時白霊山に向かえって事は七人隊の皆様と顔合わせする事はないのでは?お、ラッキーじゃない?

羽音を立てて飛んでいた虫が許可もなく当たり前かの様に私の肩に留まった。



***



「なんだ?その虫」

「最猛勝って言う奈落の手下」

「ふーん。で、そいつが何でいるんだ?」

「今後の私の心の安寧の為に」


聞いておきながらも早々に興味をなくしたらしく「あっそ。」とそっぽを向かれ頭を抱える。


「私七人隊が揃う時は一緒に居られないっぽいから」

「は?それが許されると思ってんなら今すぐその首へし折ってやるぜ?」

「ねえ理不尽な事言ってるの分かってる?」

「てめぇが居なくなったら誰が飯作んだよ」

「あれ、夢かな?」


いきなりの蛮骨のデレに私の脳は思考を一瞬ストップさせた。朝は蛮骨がイビキをかいて寝ている横を通って埋葬した老夫婦のお参りをし、そのまま森に入り木の実や川魚を採りに行きそこからまた慣れない戦国時代の台所で試行錯誤を繰り返しながら二人分の食事を作るのだ。昼はお互いの自由時間で私は山を下り城下町で食料を調達をする。お金は何故か蛮骨がくれたので有り難く使わせてもらっているが入手経路だけは考えたくないので考えないようにしている。ちなみにこの城下町はあの蛮骨が眺めていたお城のものだ。それにしてもお金の価値が如何程なのか分からないまま買い出しに来てはいけない事を学んだ。
夜は夜食作っている最中、ふらりと帰ってきた蛮骨がお金の入った袋を投げてよこすのが日課になっていた。あれ、夫婦?
そんな生活を数日繰り返せばその日常が当たり前になるのは分かるが「誰が飯作るんだ」なんて引き止める台詞をリアルに言われるだなんて思わなかった。初めてご飯を作った時は不味い不味いと言っていたのに。不覚にも嬉しいと思ってしまった自分が恨めしい。


「仕方ないじゃん、奈落の命令なんだし」

「…そうかよ。」

「虫が言うには直ぐには帰って来られるしあんまりヘソ曲げないでよ。」

「どこが曲がってる様に見えんだよ」

「ほら蛮骨、約束するから小指出して。」

「何するつもりだ」

「だから、約束。ね?いいじゃん。」


尚もこちらに背を向ける彼の前に回り込み手を無理やり掴む。凄く嫌な顔をする彼を無視して互いの小指を絡め取りリズムに合わせて上下する。


「ゆーびきーりげんまん、うそつーいたーら、はーりせーんぼーんのーます、ゆびきった!」

「なんだそれ」

「私が小さい時にしてた約束のやり方だよー!だから、もし私が破ったら針千本飲まなきゃいけないね。」

「口約束ほど頼りねぇモンはねぇよ。」

「でも私は蛮骨と出会ってから今日まで嘘ついたことないじゃん。」

「…そうかよ。」


今度こそ完全に背を向けられ、そのまま小屋を出て行ってしまった。その時、小さく「早く帰ってこいよ。」と呟いたのを聞き逃さなかった。