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薄っすらと夜が明け始め提灯も不要になり、そっと火を消し他の七人隊のみんなが待つ場所まで手を引かれ歩いていく。
繋がれた手からじんわりと温もりを感じるような気がして年甲斐もなくドキドキしてしまう。もう何年彼氏と呼ばれる対象が居なかっただろうか。思い出してみるとかなり前のような気がする。
ギュッと少し力を込めるとピクリと私よりも小さな身長の彼の肩が揺れる。


「…んだよ。」

「若いのに男らしい手だなって思っただけだよ」

「別に普通だろ」

「17歳でしょ。若いよ、十分。」

「お前ババアだからなぁ」

「またそれ言うー!ババアじゃないから!」

「うるせぇな。ババアはババアなんだよ。…だから、俺しか相手してもらえねえんだろ。」

「…え?まって、そういう意味のついて来いだったの?」

「は…」


嘘だろ。そう言いたげな顔をして此方を勢いよく振り返る蛮骨になんだか居た堪れない気持ちになり、つい目を泳がせてしまう。


「あの状況だと、そう言う流れだろ…」

「ただ犬夜叉達みたいに仲間増やして旅する意味かと…」

「脳みそまでババアかよ」


大きなため息をついて片手で頭をかきむしる。
もう片方は私の手を繋いで離さないあたり本当にそう言う意味だったのかと確認させられた。
そう言う意味と知ってしまったからか顔に熱が集中するのが分かる。


「…顔真っ赤だぞ」

「…蛮骨こそ耳まで真っ赤ですけれど。」


ふん、と鼻で笑い顔を背けるが若干口元が緩んでいるのが見えてこちらまでなんだか口元が緩んでしまう。
それに気付いた蛮骨が今度は口を尖らせて繋いだ手を思い切り引いて、目の前に、蛮骨の顔が。


「ば、蛮骨こういうのは!まだ未成年には早いから!!」

「いつまでも意味わかんねえ事言ってんじゃねえよ」

「まっまって蛮骨…!」


***


軽いリップ音に私の思考回路は止まってしまっていたようだ。気が付いたら七人隊の集まる、蛮骨と共に過ごした小屋にいた。
もう手は繋がれてはおらず、未だに顔に熱があるような気がして両手で頬を覆うと少し離れた所にいた蛇骨が拗ねた顔をしたままこちらにズンズンとやってきて、胸倉を掴まれた。
えっ何事…?


「やっと帰って来たかと思ったらヘラヘラした面しやがって。こっちはどんだけ大変だと思ってんだよ。」

「へ、あ、ごめ…」

「睡骨が死んだ。」

「えっあのお医者さんって言う人?」

「そうだよ。桔梗って女にやられたんだよ。クソッ、なんでテメエはへらへらへらへらして大兄貴の後ろを金魚の糞みたいにくっついてんだよ、本当気に入らねえ!」

「あの、えっと…ご、ごめん…」

「ごめんばっかり言ってんじゃねえぞ!もう四人になっちまったんだ、大体「蛇骨、いい加減にしろよ。」


胸倉を掴まれて至近距離で蛇骨にキレられているとその蛇骨の手をガシリと掴みこれ以上は言わせまいとさせる蛮骨。
とても真剣な表情で蛇骨を睨みつける彼に、初めてゾッとした。こんな顔も出来たのか、今まで私に見せていたソレとは全く違う、本当に人を殺せるような目を彼は持っていた。

一度は目の前で人を殺めるところを見たが何処か冷めた目で居た蛮骨を思い出すとツキン、と心が痛くなった。ソレと同時に仲間が亡くなったと言う事実を隠されていた事がとても悲しく感じてしまった。
所詮私は奈落の手先であり、七人隊には関係のない存在なのだ。だから、だから話されなくたって仕方のないことなんだ。

つい先程、一緒に行こうと言ってくれたのに。
仲間として迎え入れて貰えると、私の居場所が出来るんだと少し浮かれていたようだ。胸が痛くて痛くて仕方がない。


「私、頭冷やしてくる。」


それを言うのが精一杯で目の前の二人が何を言い合って、私になんて声をかけたのか。
聞こえてくるのはリボンを付けた最猛勝の羽音だけ。
「ちゃんと戻るよ。」とだけ伝え当てもなく元来た道をフラフラと歩いていく。

その間考える事をやめたかったが、どうにも蛇骨と蛮骨の表情が頭から離れず否が応でも考えてしまい頭を抱える。

一体どこまで来てしまったのか。
気がつくと歩いて来た道から逸れて草木が生い茂る行き止まりについてしまった。


「…頭冷やすにはもってこいの場所かも…」


盛大に溜息をついてその場に体操座りをしてこうべを垂れる。
なんで戦国時代に来ちゃったんだよ、どっち付かずの中途半端にしか生きられない私なんてお荷物でしかない。
ぐるぐるとそんなことばかり考えてしまいどんどん気持ちが滅入り目頭がとても熱く感じ始めるがこんな事で泣いてたまるか。会社で理不尽な対応だっていくらでも受けてきたんだ、それに比べればこんな状況痛くも痒くも無い。だからお願いだから涙、引っ込んで。


「…お前は、」

「えっあ、貴女なんで、ここに…?」

「奈落の気配を感じてここまで来てみたが、お前だったのか。」


生い茂る草木を掻き分けて現れたのは奈落の城で会ったっきりの桔梗。彼女の表情はいつものように冷め、私を見下ろしている。


「…何故お前はここにいる。」

「あ、頭を、冷やそうと…」

「何故ここに存在している。」

「もしかして存在を否定されている…?」


落ち込んでいると桔梗の冷め切っていたその表情がほんの少しだけ解れ、目の前にしゃがみこみ彼女の手が私の頬をなでる。


「…お前の瞳は、翡翠色だな。」


生まれてこのかた私の瞳は黒だと言いたい。
翡翠色だなんて言われた事がないのに一体この人は何を言っているのだろうか。

桔梗の手が私の目を覆う。


「なまえ…お前は、存在するはずがなかった存在だ。」


リンとした優しい声がひどく私を傷付けた。