10
「おいしかったーーー!」
「ほんとだねー」
「教えてくれてありがとう。ほんとにおいしかったです。」
会計を終えて出てくれば、まだ店先にいたみんなと難なく合流。
小狼君でもさすがにお会計のやり方が分からなかったみたいで、お財布だけ借りて先に出てもらっていたのだ。
「さてと。これからどうしよっかー」
「もう少し、この辺りを探してみようと思います。」
「んー、でもオレ達、この辺分かんないから遠出できないねぇ」
「あ、あの!どこか行かれるんですか!?」
「はい、」
「場所はどこですか?」
「……分からないんです。探してるものがあって…」
「でも、瑠璃さんが案内してるって」
「私もその探し物がどこにあるか分からなくて…。それに私はもともと行動範囲がすごく狭くて、もうそろそろ迷子になってしまいそうだったんです。」
「だったら僕も一緒に探します!案内します」
「でも、ご迷惑じゃ…」
「全然!家に電話してきます」
ここの住民じゃない私にとって、もうそろそろ迷子になりそうというのはあながち間違えじゃない。
嘘も方便というやつだ。
ぱたぱたと走り去る姿を見ながら、4人で大人しく待つ。
「そう言えば、話が途中になっちゃったね。夢を見たんだって?」
「はい」
「さっき出てきたあの炎の獣の夢です」
「妙な獣の夢なら俺も見たぞ」
「オレも見たなーなんか話しかけられたよー」
「それじゃ、みんなそれぞれ見たんですね」
「瑠璃ちゃんも?」
「はい、」
「「シャオラン」ってのは誰だ!?」
和やかに話が進んでいく中、モヒカン集団が話しかけてきた。
ココだけの話、時代遅れなスタイルだと思う。
むしろ時代に取り残された感半端ない。
「なんか用かな?」
「笙悟が気にいったとか言ったのは、おまえか!?」
「だとしたら?」
ファイさんが受け答えする。
ファイさん、小狼君の代わりになろうとしてるのかな?
「小狼はおれです」
そんな事、させないのが小狼くんだ。
自分の身代わりなんてさせないんだろうな。
迷惑極まりないモヒカン集団は勘違いも甚だしく、小狼君が笙悟さんのチームに入るのではないかと、懸念し、集団で集まってきたらしい。
更に、小狼君がチームに入らないというと勧誘とコロコロ態度を変え、
ついには、新しいチームを作るとかわけわからないことを言い、
自分の巧断(兜カニ)を出してきた。
……兜カニって
「「でっかいねーーー」」
「そう言ってる場合ではない気がします」
呑気に、嬉しそうに言っているファイさんとモコナにツッコミを入れておく。
体を回旋し長い尾で周りに傷をつけていく。
「……ありがとうございました。」
「いえいえ、瑠璃ちゃんに傷ができなくて良かったよ」
上手く避けられなかった私を引っ張って避けさせてくれたファイさんにお礼を言う。
人間って咄嗟に動けないもんなんだね。身をもって体験したよ。
「小狼君の言葉聞いてないみたいですね」
「聞く耳持たないって感じだね」
雰囲気でファイさんが出ていくと分かり、ちょっと距離を置くと
「ん?」
「あ、」
「ちょっと退屈してたんだよ。俺が相手やらぁ」
意外だ、黒鋼さんは戦い好きそうだが自分以外に売られた喧嘩は買わないと思っていた。
売られたものは即買いそうだ。…もちろん喧嘩の話。
「黒鋼さっきまで楽しんでたー退屈なんてしてないない」
「満喫してたよねぇ、阪神共和国を」
「観光客同然でしたね」
「うるせぇぞ、そこ!!」
黒鋼さんがモヒカンの人へ向かっていく。
あそこまで喧嘩好きの人も珍しい、
「小狼く―ん!」
「正義くん、あれ知ってる?」
「この界隈を狙ってるチームです!」
「あの人強いのかなぁ」
「瑠璃さんと同じ一級の巧断をつけているんです」
「蟹鍋旋回!」
巧断の攻撃を軽やかな身のこなしで避けていく黒鋼さん。
巧断の尻尾はなんとコンクリートですら呆気なく切ってしまう、少しでも当たれば怪我どころで済まされない。
避ければ避けるほど、建物が破壊され足場も悪くなり、黒鋼さんの不利となる。
上からの落下物の下敷きとなってしまった黒鋼さん。
心臓がドクンと大きな音を立てた。
もしかしてと思い黒鋼さんがいる方を見ていると、
傷だらけになった黒鋼さんがモヒカンに挑発を放っていた。
…素晴らしい肉体ですね。コンクリの下敷きになったのに。
凛々しくたつ姿の後ろに新たな巧断が現れる。
高貴なその姿はまるで、
「…龍」
龍の姿が少しずつぼやけて一個の大剣となる。
黒鋼さんが水を得た魚の様ににやりと笑った。
その後は、兜カニの関節に技を決めモヒカンの巧断を叩き切った
強い、その一言だった。
- 12 -
*前次#
ページ:
ALICE+