03
「誠に申しわけありませんでした!」
操舵室へ入りラカムを発見したので音速土下座スタイルである。
「いや、俺もまさか上から降ってくるとは思わなくて油断してたんだ。それに事故なんだろう?お嬢さんが謝ることじゃない」
「怪我のお加減は……」
「イオ達のおかげでな、もうなんともないさ」
お嬢さん、という響きにどこかむず痒さを感じる。
あの時は広がる血の海でもう助からないかも、と思ったが流石はグラン御一行。つい先刻まで怪我をしていた人とは思えないほどピンピンしている。
「それで、なんでパーシヴァルまで?」
「こいつが迷っていたのでな、連れてきた」
「本当に助かった!ありがとう!」
「へぇ、パーシヴァルがねぇ……」
ラカムは顎髭をひと撫でしてから、じゃあな、と操舵に戻っていった。パーシヴァルは眉間に皺を寄せながら帰るぞ、とクイと私の手首を引いた。
***
「あー!パーさんが女子連れてるー!」
パーシヴァルに手首を掴まれたまま艦内を歩いていると前方から元気のいい大型犬、もといヴェインが走り寄ってきた。可愛い。ワンコだ。
パーシヴァルは溜息をついた。
「ナマエちゃん、だったよな!俺はヴェイン、よろしくな!」
「よろしくねヴェイン」
パーシヴァルに掴まれていない方の手で握手しそのままブンブンと振られる。可愛い。
「で、パーさんとデート?」
「違う違う!迷子してたから自室まで送ってもらうところ」
慌てて否定すればパーシヴァルに掴まれた手首がギリ、と痛む。なぜ力むのだ。
一方ヴェインはうーんと何か考え事をしてから手をポンと叩き、俺が代わりに送っていく!と言い出した。
「何故お前が行く必要がある」
「俺の方がパーさんより暇してるだろ?だからさ!ね!ナマエちゃんとも仲良くしたいし!」
「パー様、忙しいのにここまでありがとう!助かった!」
ヴェインの言うことになるほどな、と乗っかれば今日何度目かの溜息をついたパーシヴァルはずっと掴んでいた手首を話した。
「いいか駄犬、真っ直ぐ送り届けるんだ」
「へいへい、真っ直ぐな!」
パーシヴァルは小さく頷いて足早に立ち去った。本当に忙しいようだ。また今度お礼をしよう。
ヴェインは手首ではなく手のひらをガッチリと握り、行くぞー!と元気良く歩き出す。そして思い出した。ヴェインって方向音痴ではなかったか。
「ねえヴェイン、私の自室の場所わかってる?」
「大丈夫大丈夫!コルワのとこの近くだったよな!任せろって!」
ニカッと笑うヴェインに嫌な予感を覚えながら歩き出した。
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ヴェインの大丈夫は大丈夫じゃなさそう
20190425 お肉