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「きゃあ!ご、ごめんなさい!」
「オォ〜わっしより速いねェ〜」
光の速度でエースから離れると黄猿さんが感心したように声を漏らす。私が黄猿さんより速いわけがなかろう!そんなことより私なんかに抱きつかれたくないよね、ごめんエース!!
チラッとエースを見てみると相変わらずその目はジッと私を見つめていた。
「……」
ほらぁ黙ってる!!これ怒ってるよ、まじ後でテメェ覚えてろよゴルァ!!って感じだよ!
「うう!クザン、私ってば男の人に抱きつくなんて…!きっとエースは嫌がってますわよね…」
「嫌がるってより驚いてるってのが正解だな」
「え?驚くって、どうして…?」
「そりゃ(あの天竜人が今から奴隷にしようとする男を体張って庇ったら誰だって驚くでしょーよ)」
クザンが私の顔を見ながら黙り込んだ。何!?まさか私の顔に何かついてるのか!それとも黙れブサイクとでも思ってるのか!?だがしかし私は必殺技のポーカーフェイスを繰り出す。
「クザン?私の顔に何かついているのかしら」
「ん?いや エレナちゃんが可愛いもんだから見てただけ」
「きゃわ!?」
びっくりしすぎて噛んだぞ!!可愛いだとこの私が!そんなこと言われたら惚れてまうやろうクザンめ、この悪い男め!!その上身長の高い男に女子は弱いんだぞ!非常にけしからん!
…あれ、そういえばこのシュチュエーションさっきマゼランさんでもやったような…
「エースさん、あの子は一体…」
「…そんなもんおれが聞きてェよ」
二人がそんな会話をしているのも露知らず、私はマゼランさんの服をくいっと引っ張った。
「署長、署長」
「何でしょうエレナ宮」
「わたくし、早くエースとジンベエちゃんを連れて帰りたいですわ」
「わかりました すぐに手配を!ハンニャバル!」
「何でマッシュかロリコン副署長」
「副署長はお前だろう すぐにエースとジンベエをエレナ宮の奴隷にする手続きをしろ」
「はいはいわかりマッシュたよ ああ、署長になりたい人生だった!」
総じてキャラの濃い人達だ。マゼランさんは扱いやすいしハンニャバルは野心家すぎるほど野心強いし、いつの間にかドミノさんとか消えてるけどいついなくなったんだね??
だがしかしこれでやっとエースと、後かなり急遽だったがジンベエを助け出せる。AJD作戦は大成功だ。私ってば実は策士の才能があるんじゃ…?
「エレナちゃん」
ふふふ!この才能と天竜人という地位を使ってエースとジンベエを助け出したぞ!私ってもしかして無敵なんじゃない?ん?
「ちょっと、聞いてんのエレナちゃん」
「え!?ごめんなさい、もう一回言って下さいまし」
「だからなんでエースとジンベエを奴隷にしたいわけ」
……!ぐっ!!やばいぞ、理由を考えていなかった。これはまずい。だがここでしどろもどろになっては怪しまれる。ポーカーフェイスだ!ポーカーフェイスを貫けエレナ!!私ならできる!!
「それは、二人とも可愛いから奴隷にしたかったんですのよ」
うあああ!苦しい!言い訳がこの上なく苦しい!!ジンベエは可愛いの部類に入るけどエースが可愛いとかないだろ!!バリバリイケメンだわちくしょう!
「…まァそういう事にしといてやるか」
「ギク!!」
「あらら、エレナちゃんまた声に出ちゃってるし」
「な、何のことですの?」
「んじゃ黄猿に聞いてみるか」
「それはやめて下さいまし!」
クザンが黄猿さんに声をかけようとするのを私が黙って見てるはずもなく、両手でクザンの腕を掴んで止める。もうこの際クザンにならまだしも黄猿さんにまで私の魂胆がバレれば穏便には済まない!主にエースとジンベエが!
そんなことはあってはならないわけで、私が精一杯全身でクザンを止めにかかるとその熱意に押されたクザンが「はいはいわかったから」と言って私の頭を撫でた。頭ナデナデとか女子が好きそうな事熟知してるなクザンめ!!さてはプレイボーイだな!?