16
 
無事にマリージョアについた。出来ればこんな息の詰まる所に戻って来たくはなかったけど私はまだ子供。しかも10歳だ。親元を離れるには早すぎるというものがある。

「着いたよエレナちゃん」

「あ、ええ!あの…クザンとももうここでお別れなんですの…?」

「いや、おれは家の中までエレナちゃん送らなきゃいけねェからまだだな」

やった!まだクザンと一緒にいれる!前世漫画を読んでいただけで気づかなかったけどクザンは中々に魅力的だ。まずは身長!身長高い男の人に弱いんだな〜私ってば!身長高いだけで何かとモテるぞ男は!その次は包容力。包容力って言うのかはわからないけど何かと気がきく。

私が暑い時に涼しくしてくれたり、頭ぽんぽん撫でてくれたりハンニャバルの三叉槍に危うく串刺しにされそうだった時はまるで王子様のように私を助けてくれた。流石に歳の差があるから惚れはしないものの、クザンはきっと女性にモテる。こんな魅力的な男を誰が放っておこうか!!

「何、人の顔そんなに見て おれに惚れちゃった感じ?」

「どうしてわかったの?」

「は…?」

「私、クザンはきっと女の人にモテるんだろうなって思ってたんですの」

「……あ、そう 別にそんな事ないけど」

「嘘よ、だってクザンは私から見てもいい男ですもの」

別にそんな事ないけど、とか!それこそそんなはずはない!!モテる男は自分からモテるぜアピールをしない、っと。メモメモ。

「はァ…」

「クザン?どうしたんですの、ため息なんてついて」

「エレナちゃんさ、君狙ってやってるわけ?」

「狙う?何をですの?」

一体私がクザンの何を狙うと言うのだ!仮に私がクザンの命を狙ったところで逆に私が返り討ちにあうだけだ。海軍の最高戦力としがない天竜人の私には巨人とアリぐらいの力の差があるのだ。とてもじゃないが私がクザンを狙えるなんて夢のまた夢。

「やっぱなんでもないわ」

「??」

「ずいぶん振り回されてるねェ〜青雉〜」

「これはあれ、不可抗力っつーやつだから」

???一体誰に何を振り回されてるのだろうか。話の流れが読めん!!
何が不可抗力なんだ…?
……はっ!!まさか本当はクザンはここで私みたいなチビガキとはおさらばしたいのに父上か誰か逆らえないような人物からの命令で私を家まで届けなければいけないのだろうか…。

もしそうならば、面倒くせェこと任せやがってという意味での不可抗力という意味なのか!??

勝手にそう仮定してよよよ…と泣き崩れそうになっていると大きな影が私を覆った。

「お前さん何をしとるんじゃ」

「ジ、ジンベエちゃん!?」

悲しみに打ちひしがれた私に声をかけて来たのはチャーミングでキューティなジンベエだった。ふぉおお!まさかジンベエの方から話しかけてくれるなんて…!!ちゃんづけされて戸惑ってる姿もかわいいぃ!!

「わたくしは大丈夫ですわ。ジンベエちゃんはその…」

「?」

「わたくしのこと恨んでませんの?」

「どうしてお前さんを恨むんじゃ」

「だって、わたくしはあなたとエースを奴隷にした張本人ですのよ?」

引け目を感じて思わず声が小さくなる。そんな私にジンベエは一度咳払いをしてから口を開いた。

「恨むはずないじゃろう むしろ感謝さえしてるくらいじゃ」

か、感謝!?どこをどうしたら感謝に繋がるんだ!私に奴隷にされてるのに何を感謝するんだジンベエ!もし私が逆の立場だったらフルボッコにしてるとこだぞ!?

「あのまま行けばエースさんは確実に処刑されていた 奴隷とはいえ命を繋ぎ止めれたんじゃ、わしはこれでよかったと思っとる」

「ジンベエちゃん…!」

「それにお前さんは少し変わった女子おなごみたいじゃからな」

…?変わった女子おなご?わっつ?私ジンベエに変人扱いされてるの!?なぜ!どうして、どこが変人だと思われたんだ!?あれか、やっぱり可愛いと言われたから根に持ってるのか!

くそぅ、こんなナチュラルに根に持たれた時はどう対応すればいいんだ?
わからない!わからないのはきっと私の勉強不足だろう。だから帰ったら少しは勉強でもしようと心に決めた。そして今更だがジンベエめちゃくそデカくてびっくりした。わしを奴隷にしやがってメスガキがァ〜!!とか言って捻り潰されないでよかった。

back|next
back