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「じゃエレナちゃん、元気でやりなさいよ」
「ううっクザン!わたくし短い間でしたけどクザンの事好きですわよ」
「あらら、可愛いこと言ってくれるじゃない」
クザンの長い長い足に抱きつく。こんなに良い人材ともうさよならなんて…!!実に惜しい!あと一年ぐらいマリージョアにいればいいのに。そう気持ちを込めてクザンを見上げると頭を撫でられた。
うぉおお!よしよし来たァァア!!!
「一生会えないわけじゃないんだからそんな顔しないの」
「本当?また会える…?」
「そりゃ頻繁には無理だろうけどまた今日みたいな事があればおれがエレナちゃんの護衛に回るかもしれないしね」
「なら直ぐにでも会えますわね!」
「また何か企んでるわけね」
「そ、そんなことないですわよ!?」
げげっ!!今回の奴隷の件はやはりクザンにはバレてたのだろうか!?もしバレて海軍のお偉いさんなんかにでも報告されたらまずいぞ!!
「あの、ひとつお願いを聞いてくれるかしら」
「お願い?まァ言ってみ」
「さっきのクソ豚…じゃなくて父上との会話聞いていらしたでしょう?」
「そりゃね(クソ豚って…父親のことか)」
「エースとジンベエちゃんに烙印を押すのを反対したことと起爆装置を外したことは他言しないで欲しいんですの」
「あーそれね。別にいいよ そもそも報告とかしようと思ってねェし」
「クザンは理解ある男で助かりますわ!ありがとうございまし」
「どういたしまして ーーんじゃ今度こそ行くから」
「はい…寂しいですけど。あ!わたくし玄関までお見送りしますわ!」
「ダメダメ、それじゃおれがここまでエレナちゃんを送った意味なくなっちゃうでしょうが」
クザンの的確な返しにぐっ…!と言葉に詰まる。悔しいが確かにクザンの言う通りだ。クザンが扉を開けて出て行く様子を私はここで見ているだけしかできないだなんて!!
「クザン!お元気でいて下さいまし、またお会いする日を楽しみにしていますわ」
部屋からブンブンと大きく手を振るとクザンは振り返って少し片手を上げて歩き出した。くぅう!!去り際も大人の男って感じだ!こりゃ世の女性には鼻血もんだな。
ついにクザンの姿が見えなくなった。開けておいた扉を静かに閉めて私はクザンの優しさに感動した。いや、そもそも報告する気がなかったのかもしれないがそれでも私にはありがたい事に変わりない。
エースとジンベエの存命に関わる由々しき事態なのだ!もし報告されちゃったらしょうがないか〜なんて妥協はしていられない。私はまた次何かあればクザンを指名しようと心に決めた。