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「さァ!では取り掛かりますわよ!」

グイッと腕まくりをして水に濡れたタオルを片手に持つ。ベッドの上に眠るエースの横に立ってまじまじとエースの鍛え上げられたムッキムキの身体を見て思考が止まる。まずい、思った以上に私には刺激が強い!!

だがしかし!!これは下心があるからやるのではなく、あくまでエースの安眠の為の行為であってだな!決してやましい気持ちなどない!しかも私はまだ10歳。下心などあるわけがないのだ。そう自分に言い聞かせてまず腕からふきふきと拭き始めた。

「どうしたんじゃエレナ 顔が赤いぞ」

「はひ!?そ、そそそそっそんなことないですわよ!何を言っていらっしゃるのかしらジンベエちゃんったら!」

あっぶねェエエエ!ジンベエにバレるとこだったわほんとマジ!!
キョトンとした顔して洞察力ハンパないな!恐れ入った、あっぱれだ。私の真意を悟られないように気をつけねば!!

「あ、ちょっとエース やり辛いから動かないで下さいまし」

ゴロンと寝返りを打つエースをうんしょっと引っ張って仰向けに戻す。ふぅ、寝ている身体を動かすにも一苦労だ!よし、では続きを…と再び取り掛かろうとするとまたしてもエースが寝返りを打つ。貴様ァ!さっきから一体なんなんだ!少しは大人しくしてくれ。

「もう!こっちを、向きなさいってきゃあ!!」

グワンと揺れた視界。目の前のそばかす。手のひらに伝わる素肌の感触。そして背中と腰に回る逞しい腕。こ、これは!?一体どういう状況なんだ!!

「ちょっ!?んぶっ」

「ふむ エースさんも中々やりおる」

おぃいい!?中々やりおるじゃねェだろ!何を中々やりおるんだ!?ええ!?完全に寝ぼけてるだろうが!!

どうやら寝ぼけたエースに抱き締められている私。なんというラッキーハプニング。神は私にどうしても血を流させたいようだ。ガシッとエースに強く抱き締められて顔面がエースの厚い胸板に押し付けられる。くぅうう!嬉しいが息が苦しい!窒息する!!

「んんっ…!ぷはっ!エ、エース!起きて…起きて下さいまし!!セクハラですわよ!」

「んん…なんだようるせェな…ん?何だお前エレナか なんでおれに抱きついてんだ?」

お前が抱き締めてきたんだろ!?いやそれより待て待て待て!今エース私の名前呼んだよね!?え、名前知ってたの!?どうしよう、抱き締められながら名前を呼ばれるなんてもう…ダメ、鼻血が…っ!!

ブシャァ!

「うわ!!おい、どうしたんだよ!病気か!?すげェ量の鼻血だぞ!」

エースが寝ている身体を慌てて起こして私を軽々と持ち上げベッドに座らせる。

「これはまずい事になった!すぐに医者を呼ぼう それまで気をしっかり持つんじゃ」

「これは、ちがっ」

「わかってる こんな大量の血見たことねェもんなお前は 怖ェよな」

ちがァァう!!ちがう!これは私の興奮バロメーターがマックスを超えてしまった為に吹き出た下心のある鼻血なんだ!断じて病気なんかではない!医者など呼んだら誤解されるから呼ぶなジンベエよ!早まるんじゃない!もっと冷静になれ親分!

「大丈夫ですわお二人とも わたくし元気です!」

「嘘つくなよ そんな量の鼻血出しといて平気なわけねェだろ!」

「エースさんの言う通りじゃ 大人しく医者を呼べと言うとろうが!」

聞いてねェ!この二人全くと言っていいほど人の話を聞いてないぞ!大丈夫だと言ってるのになぜ信用しないんだ!?こんな大量の血を見れば二人が怪しまれるというのがわからないのか!!とにかく鼻血よ、何でもいいから止まってくれ!!

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