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「大変!すっかり忘れていましたわ」
「なんじゃいきなり」
なんで私はこんな大事なことを忘れていたんだ!まったくひどい女だ、私ってば。
「エースもジンベエちゃんもお風呂、入ってなかったですわよね」
「そういやそうだな」
「言われてみればそうじゃな」
いや軽ッ!!この2人にとってお風呂どんだけ優先順位低いんだよ!インペルダウンからだから一体どのぐらいお風呂に入っていないのか…。それより何日も入っていないはずなのに臭わないとか凄くない?流石イケメンと可愛い子!!
「もし嫌でなければお風呂、入りましょう?」
「おれもそうしたいんだけどよ、これ海楼石の手枷だろ?これがあると力入らねェんだ」
…!!!そうか、そうだった!これ海楼石の手枷だった!うぅ、力が入らないとは厄介な事になった。ジンベエにエースを入れてもらうという手も考えたがこの部屋にあるお風呂だとエースはともかく巨体のジンベエまで同時に入る事はできない。
これぞ絶対絶命!どうしたらいいんだ。
「だからおれにいい案があるんだ」
「へ!?なんですの?言って下さいまし!」
「言う代わりに絶対やってくれよ?おれも流石に風呂入りてェ」
何を!当たり前じゃないか!エースの願いを叶える為なら私は腹踊りもできる所存だ!さあこの私にドーンと何でも言うのよエース!なんてったって私は天竜人。職権乱用でもなんとでも言いなさい。天竜人に生まれたからにはその地位フル活用してくれるわ!
「エレナ、お前一緒に入ってくれよ」
「……ふぁい?」
「一緒にじゃと…?」
思わずふぁい?とかバカみたいな声が漏れた。可笑しい、もし私の聞き間違いでなければ一緒に入ってくれと聞こえたのだが…。いやいやいや!!私ってばなんて浅ましい女なの!ついに幻聴まで聞こえるようになるなんて!
「本気かエースさん エレナと風呂に入るなど」
うぉおおおお!?幻聴じゃなかった!?え、ジンベエもそう聞こえた!?やっぱそうだよね、一緒に入ってくれって言ってたよね!!!
でもよく考えて、一緒にお風呂に入ると言うことは…!はぅっ!私はまだ年端もいかない可憐な少女!大人の階段に登るのはまだ早いのエース!!そんな甘いセリフ吐かれても私は、私は!!
「いいですわよ」
「お!本当か?よかった 本人がいいって言ってるからいいだろ?ジンベエ」
「うむ…ならいいのじゃが」
私の意思の弱さよ!下心丸出し?ええい!なんとでも言え!しょうがないじゃんだってお風呂だよ!?ビッグイベントじゃん見逃すわけないじゃん!
あ、でも安心してほしい。ちゃんとエースには海パン履かせるし私も水着着用だから。ただ髪洗って…か、身体洗ってあげるだけだから!決してやましいとかそんなんじゃないから!
「行きますわよエース、お風呂はこっちですわ」
「おう よろしく頼むな、エレナ」
ああ、そんな無邪気な笑顔で微笑まないで…!私の中の邪悪な何かにシミる!私が何を考えてるかも知らずにただお風呂が入れる嬉しさから付いてくるエースに申し訳なくて、私はパチン!と両頬を叩いた。