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「エレナ、お前そんな急いでどうしたんだよ 腹減ってんのか?」
「腹が減っとるなら我慢せず食え お前さんはまだ若いんじゃ」
「腹!?腹どころでわありませんわ!」
この二人何をお門違いの話をしてるんだ!?だいたい話の流れ的に私が慌ててるのはお腹が空いてるからっていう思考回路になるのがおかしい。実に可笑しい。
「慌てても仕方ありませんわね。いいですの?私達はあと一時間後にはマリージョアを出港してインペルダウンへ向かいますわ」
「インペルダウン?どういうことだ」
「…お願いですから心を鎮めて聞いてくださいね。エース」
「なんでおれだけなんだ ジンベエもだろ?」
この際なぜ自分だけ名指しで呼ばれたのか不思議そうにするエースは放っておく。事がことだけにふざけている場合ではないのだ。
「ルフィがインペルダウンに侵入したという報告がありましたわ」
「ルフィが!?」
「エースさんの弟が…」
「エース、公開処刑を言い渡されたあなたを助ける為だそうなの。だからわたくし今からルフィを助けに行きますわ」
「お前は大丈夫なのか?そんな事して」
「あら、誰に聞いているのかしら。わたくしは世界貴族”天竜人”でしてよ?」
「エレナ」
「はい、なんですー!?」
なんですの?と繋ごうとした言葉はエースの力強い抱擁に掻き消された。
いや冷静に分析してる場合じゃない。私エースに抱き締められてるんだよ!?んきゃああ!あったかいしちゃっかりエースの腕の中にすっぽり収まってるし一言で言うともう、最高!!今天に召されても何も可笑しくないほどだ。
「ありがとう お前には感謝してもしきれねェな」
「感謝なんて…。わたくしはルフィのファンだから助けるんですのよ それがたまたまエースの弟だっただけですわ」
「それでもだ。おれの命の恩人であり、弟の命の恩人でもある おれは助けられてばかりでお前に何もしてやれてねェけど…」
「いいんですのよ!エースもジンベエちゃんも、ルフィも!私が助けたいと思うから助けるだけであってこれはわたくしの私欲ですから何も気に負わないで下さいませ」
「わしらはその”私欲”に助けられとるんじゃ 気に負わない云々はともかくとして感謝ぐらいさせとくれ わしとエースさんを助けてくれてありがとう」
そう言って頭を下げるジンベエ。ちょんまげみたいな髪の毛がなんともキューティー…じゃない!!
私は慌ててジンベエの肩を掴んで前を向かせる。感謝されるのはもちろん嬉しいけどこう面と向かって言われると照れてしまうのだ。
「感謝して下さっているのはわかりましたから!インペルダウンに向かう準備をしてくださいませ」
そう、感謝も嬉しいが今はルフィの救出が先だ。だが彼を奴隷という形で助け出すことはできない。なぜなら麦わらのルフィは海賊王になる男だから。
…いや、でもよく考えたらルフィの仲間になるジンベエを奴隷にしちゃってるような…。
ええい!もう難しいことは考えんぞ!だけど奴隷という形以外でどうやってルフィを助けようか。