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「ではエレナ宮 またのお越しをお待ちしております」
「ええ また署長に会いに来ますわね!」
眩しくキューティーな笑顔を浮かべて私はマゼランさんに手を振った。
ふ、どうだこのあどけなさ満載の可愛い私は!
キューティースマイルの効果は凄まじかった。マゼランさんが目をハートにしながら口から泡を吹いている。もはや恐怖の域に達してしまいそうだ!
「エースが処刑されるって言うからよ おれハンコックに頼んでここまで連れて来てもらったんだ!」
私は後ろから聞こえた能天気なその声に全身の毛穴から汗が吹き出る感覚がした。
「ル、ルフィったらも〜!そんなウソつかないの!インペルダウンで待ち合わせしようって言ったのはわたくしでしょう?」
「お前何言ってんだ?」
「あらやだ!ルフィったら髪の毛に芋けんぴがついてますわ。ちょっとしゃがんで下さいまし!」
私はルフィの胸ぐらをグイッと引っ張り、髪の毛を触るフリをしてこの能天気おバカさんに忠告する。
「いいこと?これ以上余計なことは喋らないで下さいまし もし約束を守れたらとっても美味しいお肉を食べさせてあげますわ」
「肉!?本当か!」
「ええ 言うことを聞くならですけど」
「わかった そんで言うことってなんだ?」
「簡単ですわ。とりあえず私がいいと言うまでなにも喋らないで欲しいんですの」
「え〜なんでだよ?」
「あら、約束を守れないのなら別にいいんですのよ?美味しいお肉は代わりにわたくしが食べますわ」
「守る!だから肉食わせてくれ!」
「わかりましたわ じゃあ小指を出して下さいまし」
スッと差し出されたルフィの小指と私の小指を絡めてゆーびきーりげーんまーん、とお馴染みの歌を歌う。約束破ったら本当に針千本飲ませてやるからな未来の海賊王め!
「悪いなエレナ ルフィが迷惑かけて」
「エース!え、えへへ、ちょっとお黙り願いたかっただけですから大丈夫ですわよ」
「やっぱりそうだよな この詫びはいつか必ずする ありがとな」
エースが申し訳なさそうな顔をして謝ってくるもんだから慌てて私は手を横に振った。そんな!エースにそんな顔をして欲しいわけじゃないんだ私は!
「ルフィとは余計なことを言わないってちゃんと約束しましたからもう安心して下さいまし」
「約束?」
「ええ、指切りもしましたし完璧ですわ」
少し誇らしげにさっきルフィと指切りをした小指を見せる。私の言いつけ通り口を縫い付けられたかのように何も言葉を発さないルフィにグッと親指を立てた。