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「それで 話とは一体何かね?」
「そのですね…」
私はチラッとルフィに視線をやった。そこには呑気にサンドイッチを食べているルフィが。もはやそのサンドイッチはどうしたのかなんてことは聞かないことにしよう。
「もぐもぐ…ん?なんだ?」
「なんだ?じゃなくて少し食べる手を止めてくださいまし」
「えーなんでだよ」
なんでだよじゃない!これからの未来においてとてつもなく重要なこの瞬間に呑気にサンドイッチなんか食ってるなんて舐め腐ってるのもいいとこだ。
「コホンッ…さっそく本題に入らせていただきますわね」
「ああ」
かなり上の方にあるレイリーの顔を見つめて私は覚悟を決める。よし、言うんだ私。
「レイリー、あなたに修行をお願いしたいんですの」
「ほう…。それは一体誰の修行かな?」
「ここにいる、ルフィの修行を…」
そう言ってからルフィを見てみると、彼は一体何のことだ?と不思議そうな顔をして私を見つめた。
「修行ってどういうことだ?おれがおっさんに鍛えてもらうってことか?」
「ええ 確かあなた達の海賊団はここ、シャボンディ諸島で散り散りになっていますわよね」
「…!」
ルフィの目が揺らいだのを見逃さずに私は更に詰め寄った。恐らく仲間が一人一人消えていってしまった時のことを思い返しているんだろう。そんな私たちを傍でレイリーがどこか楽しそうに見ているのを感じる。
「ルフィ達が強いのは知っています けどこのままの状態で新世界に行くのを私はオススメできませんわ」
「そっか」
「ルフィ?」
「ずっと考えてたんだ 仲間を守るためにどうすればいいか。ーーおれはもう二度とあんな思いはしたくねェ」
真剣な顔つきで遠くを見つめるルフィに胸が痛んだ。私はその場にいて彼らの気持ちがわかるわけではないけど、とても辛かっただろうと思う。仲間が一人ずつ消えていってしまうのを見てるだけしかできないなんて。
「おっさん おれからも頼む!修行してくれ!」
「随分と早い決意だな。力を得てキミの守りたいモノとは仲間ということでいいのかね?」
「仲間もそうだけど 全部だ。エースもエレナも、今まで出会った友達も 全部」
レイリーとルフィが見つめ合う様子をそばで私は見守る。よかった、事が無事に運びそうだ。それより"守る"のなかに私まで入っていることに驚いた。エースは分かるけど、なんで私まで?
私はいつもより凛々しい顔のルフィから目を離せなかった。
「仲間以外も全部か…キミは見かけによらず欲張りだな。フフフッ 気に入った 奴がその帽子をキミに授けたのも頷けよう」
「欲張りでもいい 全部守りたいんだ!」
「そうか 私はやるからには中途半端は許さんが覚悟はできているか?」
「おう!よろしく!!おっさん!!」
「ルフィ?おっさんはダメですわよ。レイリーは先生なんですから」
「そうだった お願いしますレイリーさんだ…いやレイリー先生…。師匠?」
「どれもしっくりきませんわね」
「よろしくお願いします!!!レイリー!!!」
「……まあ…何でもいい…」
微笑ましいやりとりを見て頬が緩んだ。頭を下げるルフィに少し困り気味なレイリーは中々に珍しい光景だと思う。
兎にも角にも、レイリーに修行をつけてもらうという確約が取れたことに私は心の底から安堵した。