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「それで、お話とはなんですの?」
私は大人の貫禄というものをぷんぷんと身に纏わせ、不敵な笑みを浮かべて私を見下ろすレイリーを見上げた。ルフィを先にバーに戻らせたと思えばなぜだか私はレイリーに引き止められたのだ。
聞くにレイリーも私に話があるらしい。
あれおかしい。私は転生してあらかじめレイリーを知っていたから用があるのは頷けるんだけど、レイリーは一体わたしに何の用なんだ??
「なに そう警戒することはない かわいいお嬢さんに危害を加えるようなことはしないさ」
まぁ危害を加えられるなんて思ってなかったけどさ!別の意味で警戒してるんですよね。
「さっそく本題だがエレナ キミはなぜわざわざ私にルフィの修行を願い出た?」
「お、おほほ。もちろんそれはレイリーがお強い方だからですわ なんてったって海賊王の右腕だった方ですもの」
「ふむ 私にはとてもそれだけが理由だとは思えないのだが」
「……っ」
「何か隠し事をしている…違うかな?」
考えろ!考えるんだエレナ!ここで選択肢を間違えるわけにはいかない。乙女ゲームでよく3つほどある選択肢の中で選ぶ形式で考えよう。
1、実は…と本当のことを話す
2、うまいことを言ってはぐらかす
3、隠し事なんてしていないとシラを切る
…くっ!!ここはやはり選択肢2しかない!
「か、隠し事?わたくしがレイリーに隠し事だなんて、純粋にお強いレイリーにルフィの修行を頼みたかっただけですわ」
「そうか 私も鬼ではない。キミがそう言うならひとまずそういう事にしておこう」
「何のことかはわかりませんが今言っていることは事実ですわよ おほほ」
よぉし!!ひとまず難を逃れた!思わずガッツポーズしそうになるのを必死に心の中にとどめる。
「キミが話したくなるまで待つことにしよう 無理意地はしないさ」
「……どうして?」
「ん?」
「どうして問い詰めないんですの?レイリーなら力ずくで聞き出すこともできるはずなのに」
「私は無理やりという事が嫌いでね キミのように可愛らしいお嬢さんならなおさらだ」
レイリーの好感度が一気にアップした。うう!この色男め、さては好感度アップマスターだな!?これが落ち着きのある大人ってやつなのか!たしかにコロッとやられてしまいそうだ。
「それに人間には言いたくないことの一つ二つはあるものだ。だが話したくなったらいつでも言いなさい どんな内容であれ私は可愛いお嬢さんの味方だよ」
「レイリー…ええ。言いたくなったら絶対言いますわ ありがとうございまし」
「ああ そうするといい。さて そろそろ彼の忍耐力も尽きて来る頃だ」
「そうですわね!戻りましょう」
私はレイリーの大きな手を掴んでバーに向かって歩く。エースの手とはまた違った、数々の試練をくぐり抜けてきた手はとても分厚く、そして大きかった。
「フッ…キミは将来魔性の女になりそうだ」
「あら、失礼ですわね わたくし魔性の女とは程遠い可憐でキュートなレディでしてよ?」
「ほう。ならどんな女性に変身していくか これからのキミの成長を楽しみにしているよ」
レイリーは大人の微笑みを浮かべて私を優しい目で見つめた。そ、そんな優しい目をされたらドキドキするじゃないか!!いや、でも私はエース一筋だから!浮気なんてする尻軽女なんかじゃないんだから!はぁあ!早くエースに抱きしめてもらいたい!