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「エレナ!まずはやっぱり奴隷だえ!奴隷を買いに行くえ!」
「奴隷…父上様、わたくしはやっぱり奴隷など…そのような可哀想な事、出来ませんわ」
「エレナは優しい子だえ〜。心配しなくても大丈夫だえ、あいつらは人間以下の生き物だえ!」
「そうだとしても可哀想ですわ…わたくし、そんな痛めつけられる奴隷の方々を見ると悲しくなってしまいます」
「なに!?エレナを悲しませる奴隷は即刻処刑だえ!この世から消してやるえ!」
だめだ!まるで話にならねぇ!このクソ親父はどうしてこんなにも人間の言葉が通じない?常日頃から神だとか神聖なる血族だとか思っちゃってるから感覚が麻痺してんのかなやっぱり。
「アマデウス聖、人間オークションはこの先でございます」
「おお、そうだったえ。この奴隷も古くなってきたえ 新しい奴隷を買いに行くえ!」
おめーもオークションの場所教えんなよSP!!いくら仕事だからって、同じ人間を売るなよ!はぁ、ほんと呑気に微笑んでるクソ親父無理。引っ叩いてやろうかしら。
民間人が土下座する中、ゆったりゆったりと歩く私達の他に、動く影を見つけて嫌な予感が脳裏を過ぎった。
天竜人が目の前を歩いてる最中は頭を垂れてやり過ごさなければ血を見ることになるのに。
「誰だえ、そこで動いてる下々民は!わちきの前で動くとどうなるか、目に物を見せてやるえ!」
父上がそう言い放ったと同時にSPの人達が一斉に人影が動いた方向へ銃を放つ。
何度経験しても慣れないこの銃の音に思わず目を瞑った時だった。
「きゃっ!」
私の膝裏と背中に逞しい腕が回り、視界は半転して空が映った。何がどういうことなのか。まさか天竜人の私を攫ってお金でも請求しようとする輩なのか。
いや、それはない。なぜなら天竜人に手を出そうものなら海軍が大将、海軍の持つ全ての勢力を率いてやってくるからだ。
ーーでは誰がこんなことを?
疑問に思いながらも空から視線をズラすと、私の目はその人を捉えて離さなかった。
「…っ、エー…ス?エースなの?」
「へへっ。まァな 迎に来たぜ?お姫サマ」
ズッキューン!と私の心臓が撃ち抜かれた音がした。待って、無理!!いきなりすぎる再会に私は驚きを隠せない!
まさか毎日エースを想うあまり幻覚を見てるんじゃないかと、私はゴシゴシと目をこする。
「……エースだ」
「おう。おれだ 迎えに行くっつっただろ?だから…ってうお!!」
エースだと分かった瞬間、私の行き場のなかった腕は彼の首に回され、強く強く、エースに抱きついた。会いたくて会いたくて、夢にまで見たエースが何故だかここにいて、私を腕に抱いている。
ようやく会いたかった、恋い焦がれてた人に会えて涙がポロポロと頬を滑り落ちる。
「会いたかったよっ…エース!!」
「ああ おれもだ。二年間、待たせちまったな」
その言葉に私は首を振る。待たせた、なんて。勝手に置いていったのは私なのに。
エースの顔を見ようと、涙で濡れた顔を気にせず少し下がって大好きな人の顔を見る。するとエースは優しく微笑みながら指で涙を掬ってくれた。