05
インペルダウンに向かう船の中で黄猿さんに会った。今日で海軍の最高戦力2人に会えて私はお腹いっぱいです。
黄猿さんの喋り方がすごくゆったりしてるから少し眠くなりそうだったのは記憶に新しい。
「大将青雉!間も無く”正義の門”に差し掛かります!」
「あらら、もうそんなとこまで来たのね」
「正義の門…!」
見たことあるぞ!もちろん前世漫画で見ただけだけど。あまり覚えてないけどたしかCP9とか出て来たところだよね。ルッチとか私かっこいいなって思ってた!猫化してる時とか撫でくりまわしてみたい。
「マリージョアにいた時より生き生きしてるねお嬢ちゃん」
「そりゃそうですわ!あんな息の詰まる…!!」
そこまで言いかけてハッ!と口を塞いだ。やばい、今のでもし変な風に思われたらエース救出が水の泡になるかもしれない。私は仮にも天竜人だ。もっと天竜人らしく振舞わねば。これがエースを助けるためだとわかればきっと奴隷の件は白紙に戻ってしまう。
「い、息が詰まりそうですわ!この私があなた達の様な下々民に囲まれて…!私は天竜人ですのよ!」
自分で言ってて意味がわらかない!!だけどここは強行突破だ。いくら青雉であっても私の計画がバレてしまうのはまずい。とてもまずいのだ。だからこんな言いたくもない言葉を並べるしかない…!くぅ、悔しい!ごめんよ青雉、もっと私に立場があれば!
「ぶっ!」
「!?」
吹いた!青雉が!!?
「あーすまんすまん。あまりにもお嬢ちゃんが面白かったからつい」
「人を見て吹き出すなんて失礼ですわ!」
「だから謝ってるでしょーが。でもしょうがねェよ、お嬢ちゃんの嘘があまりにもバレバレだったからさ」
「ギクゥ!!」
「ほら、言葉に出しちゃってるし」
「ち、違いますの!これはあの、その!!」
「わかったから落ち着きなさいや。はい息吸ってー」
「すぅ〜」
「吐いてー」
「はぁ〜」
「ほら、落ち着いた」
「そ、そうね。ーーって落ち着くわけないでしょう!!」
ぺしっ!と軽く青雉を叩く。完全に青雉のペースに乗せられている。くそぅ、これが年の功ってやつか!所詮私はガキンちょってか!
「大将!海流に乗る準備を」
「はいはい。あーこちら青雉 これから海流に乗るから開門の準備をよろしく」
「海流…?」
「そ。まァあれよ 海軍専用の交通手段みたいなもん」
「なるほど…!」
そんな海流があるのは初めて知った。海軍専用とか何かレア感漂う海流に乗るのか私。
「あとどのぐらいで着くんですの?」
「海流に乗っちゃえばすぐだよォ〜」
「わっ!き、黄猿さん」
「これはすまないねェ驚かすつもりはなかったんだよォ」
突然現れた黄猿さんに驚けば黄猿さんはぽりぽりと頭をかいて笑いながらそう言った。絶対この人すまないと思ってない!顔が笑ってるもん。ていうか青雉さんも黄猿さんも随分フレンドリーだな!てっきり天竜人だから私にも敬語なのかと思ってたけどそれどころかよしよし頭撫でられてるし!!あ〜でも黄猿さんみたいなお爺ちゃんほしい。なんでも買ってくれそうだしとことん甘やかしてくれそう。
「おっと、そろそろ海流に乗るからお嬢ちゃんは安全なところに避難ね」
「お嬢ちゃんお嬢ちゃんって、私はお嬢ちゃんという名前ではないですわ」
「それを言うならおれだって青雉って名前じゃないんだよなァ」
知ってる!クザンだよね!知ってるよ、でもここで私が知ってたらなんで知ってるんだって可笑しなことになるから敢えて知らないふりをする。
「あら、ならなんてお名前なんですの?」
「クザンっつーのよお嬢ちゃん」
「クザンねーーだからお嬢ちゃんじゃないですわ!わたくしの名前はエレナでしてよ」
「エレナちゃんね、了解」
よかった、さっきからお嬢ちゃんって呼ばれ続けてなんだか変な気分だったんだ。
「んじゃおれの事も名前で呼ばなきゃだよな?」
「え?」
「え?じゃないでしょ。それじゃ不公平でしょーがお嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんじゃない!わかりました、名前で呼びますからお嬢ちゃんはやめて下さいまし」
そんなこんなで青雉をクザンと呼ぶ事に決まった。いきなり大将を名前呼びとかなんと恐れ多い!でも私そういえば天竜人なんだよね。
名前呼びと決まったもののなんだかむず痒い!とても小っ恥ずかしいと思えた瞬間だった。