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「おれ達海賊にしかできねェ事と言ったらあれしかねェよな」
ゴクリと生唾を飲み込みエースの次なる言葉を待つ。エースまで分かっちゃったらまるで私一人だけ分からないでバカみたいじゃん!そんなの嫌だ!仲良くやろうよエース!!
「一緒に冒険して世界を見て回る事!そうだろオヤジ」
「う〜ん…確かに海賊にしかできなさそうですけど流石にそれは」
「よく分かってンじゃねェかエース」
「へへッ まァな!」
ほょおおぉぉ!?マジで!?ぼ、冒険!?一緒に世界を見て回る!?この私が!?
ダメだ、あまりに現実味のない話すぎてすでに頭がオーバーヒートしてる。
一体何がどうなってこんな美味しいお話が転がり込んできた?
この世界に転生できたのも奇跡の中の奇跡というか本当はありえないぐらいなのに!その奇跡にプラスαでキャラとの冒険もセットで付いてきちゃうよん!みたいな!?
もうね、一言で言うとね、最っっ高っすよ。
今なら道端に咲いている花たちが一斉に私に向かって笑いかけて来てくれる気がするぐらいにね。
「で、お前の答えはどうなんだよい」
「ハッ…!コホンッ!わたくしとしましてはとってもとっても嬉しくて是非お願いしたいのですけど…」
「何か心配事でもあるのかね?」
言葉を濁した私にレイリーが尋ねる。
「ありますわ。そりゃ一緒に冒険できるならそれ以上に嬉しい事はないですけど、わたくしは"天竜人"ですわ」
そう、"天竜人"という事が一番のネックなのだ。しかもエースが私を連れて逃げた事で次期に捜索願いが全世界で報道されるのは目に見えている。
そんな中、白ひげ海賊団の皆さんやエース、レイリー達に迷惑をかけるわけにはいかない。
もし私が白ひげ海賊団と共に航海をしているなんて事が世間にバレれば世界政府の最高戦力がやって来て戦闘になるはず。ーーこの世界で起きるはずだった頂上戦争クラスの闘いにはならないだろうけど、そこまでのリスクを背負わす訳には行かない。
「バーカ 天竜人だからなんだよ。おれがそんな事で諦めると思ってんのか?」
「…エース」
「すまねェな。このバカはこうと決めたら譲らねェ石頭なんだよい」
「彼らは世界政府が動こうとそうやられるタマではないぞ。しがらみを考えず全てを任せてみるのも良いと思うが」
「グララララ!こいつらの言う通りだ。ハナッタレ娘が一丁前におれ達の心配するなんざ100年早いってんだ」
白ひげが穏やかな表情で笑う。確かに私みたいな小娘が心配したって何にもならないけど…
「だからよ、そんな難しいこと考えねェで大人しくおれ達について来い エレナ」
「…後悔しませんの?後から、やっぱり降りろなんて言われてもクーリングオフ出来ませんわよ?」
「しねェよ。なんなら今ここで約束してやってもいい」
そう言うとエースは何を思ったのか私の目の前までやって来るとひざまずき、驚いて硬直したままの私の手を取りその甲に唇を落とした。
「お前はおれが守る。だからついて来てほしい」
「…〜っ!!よ、っよろこんで!地獄でもどこへでも!エースが行くところならわたくし死んでもついて行きますわ!」
「ハハッ!地獄なんか行かねェよ。ーーでもそれ聞いて安心した」
「エ、エース?」
私の小指をピンと立たせ、自分の小指と絡めてきたエースに一体どういうことなのかと顔を上げればとろけてしまいそうなほど優しい瞳のエースと目があった。
いつもの少年らしいエースとのギャップに思わず胸が高鳴る。
どうしよう。この太鼓の達人ばりの心臓の音漏れてないよね?漏れてたらどうしよう。ムードぶち壊しでそれに失望したエースが、「おれ心臓で太鼓奏でる女嫌いなんだ」とか言って嫌われたりしないよね?
「何変な顔してんだよ。約束するっつったろ?」
「え?ああ!そうでしたわね!しましょう!約束!」
あぶねぇ!思わず私は太鼓の達人なんかじゃないから!って言いそうになった。本当に危なかった。
「?おう。ゴホンッ…あー、改めておれのワガママに付き合ってくれてありがとう。この先どんな事があろうとお前を守り抜いてみせる。約束だ」
「ええ。私もいつその時が来てもいいようにずっーとエースのそばについて回りますわね!」
余程嬉しかったのか、ほんのりピンク色に色づいた頬のまま屈託のない笑顔を浮かべるエレナと、そんなエレナの頭を撫でるエースは恋人同士の逢引のように見えた。
一方、指と指を絡めながら笑い合う二人をそう遠くない距離で見ていた保護者達はーー
「フフフ、見せつけられているような気分だな」
「ったくやっと連れてきたかと思えば早速プロポーズかよい」
「まァいいじゃねェかマルコ 男は黙って祝福してやんな」
「はァ…わかったよい」
若い二人の醸し出すなんとも言えない雰囲気にあてられ、心なしかマルコの頭の上のパイナップルがしんなりしたように見えたのはまた別の話。