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「ったくお前は何してんだよい」
「エ、エース!?」
なんとマルコに抱きつこうとした私を止めたのはエースだったのだ。
ていうか止め方!!後ろから回って来たエースの腕が私のお腹と接触を…!
「謝るだけなのに抱きつく必要ねェだろ」
「そ、それはそうなんですけれども」
「なんだ ヤキモチかよいエース」
「ああそうだ!悪いかよ」
「エース…!」
嬉しくて顔を綻ばせていると更にギュッとエースが身体を寄せて来て、私の肩越しにエースが顔を出した。
「つーことだからマルコ 今後エレナに抱きつこうとしたらセクハラでオヤジに言いつけてやるからな」
「肝に銘じとくよい つっても抱きつこうとして来たのはそちらの姫さんなんだがな」
「そうですわよエース 許してくれたのが嬉しくてつい!えへへ」
笑いながらそう言うとエースはくしゃっと私の髪を撫でて私の目を覗き込んで来た。
「いいかエレナ お前が抱きついてもいいのはおれと…百歩譲ってジンベエのどっちかだ」
「……っ!」
ち、近い…!!近いよエース!
私の肩に乗ってるエースの顔が横を向いて私を見つめている。ぐわっ!眩しい、眩しすぎる!イケメンパワーでやられてしまう!
「返事は?」
「は、い!」
「よし」
「ハァ…こっちが恥ずかしくなるぐらいのバカップルだよい」
ため息をつきながらも優しい表情で私とエースを見つめるマルコに心が温かくなった。
そしてついに私達を乗せたモビーディック号は魚人島へと到着した。
「うわぁ…キレイ」
ありきたりだが美しき魚人島を目にした私が最初に放った言葉は何の変哲も無いありきたりすぎるほどにありきたりな言葉だった。いやだってこれ完全に夢物語の世界だよ。
入江で人魚がキャッキャと泳いでいる姿はまさに私が待ち望んでいた魚人島そのもの!生人魚だよ!下半身がお魚さんだよ!
「ふふ ずいぶんと嬉しそうじゃないか」
「レイリー!嬉しいに決まってますわ お話には聞いていましたけど実際に見るのと話を聞くのとでは違います…こんなにも美しい世界があるなんて知らなかった」
こんなに穏やかな気持ちで美しい世界が見れるだなんて思いもしなかった。
だって以前なら大層立派なSP達や海兵達を連れての大掛かりな警護と人間を人間と思わないような父親のせいで観光なんてできないから。
だからこうしてなんのしがらみもなく普通の女の子のように純粋に景色を楽しんだりできる事が嬉しい。
「だから白ひげさんに感謝しなくちゃ こんな得体の知れない天竜人なんかを航海に連れ出して下さるなんて…きっと今私に奇跡が舞い降りているのだとしか思えませんわ」
「君の言う通りだ。望むものはすでに君の中にある。奇跡は君をまっている。ポートガス・D・エースをインペルダウンから連れ出したあの日から」
「そんな大げさですわレイリー!こんなちんちくりんで一人じゃ何もできない私なんかに奇跡が待ってるだなんて…」
「そうかな?私から見れば君の周りは奇跡そのものだがな」
世界が認める最も海賊王に近い四皇・白ひげに恩を作り共に航海していることや二度もインペルダウンへ行きルフィまでもその手で救ったこと。
そして処刑されるはずだったエースがこうして無事に家族の元へ戻れたこと。
彼女の周りにはすでに多くの奇跡がまるで順番待ちをしているかのように集まっている。
レイリーは不思議そうな顔で自分を見上げる美しく成長した少女がこの先どんな奇跡を見せてくれるのかと思うと自然に口角が上がるのだった。