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「ずびっ…マルコ わたくしったら最低ですわ エースは本当の事を言っただけなのに八つ当たりをしてしまうなんて」
昨晩エースから遠回しに私を好きになる事はないというニュアンスの発言をされたり、ついさっきはただの枕にしか思ってねェなんて言われればそりゃ恋する乙女は傷つくわけで。だからってエースはこれっぽっちも悪くない。
なのに悲しくて悲しくて、ついて来ようとするエースに来ないでなんて言ってしまった。私ったらなんて酷い女!
「最低なんかじゃねェよい。寧ろお前はエースに優しすぎるんじゃねェかとおれは思うがね」
「そんな事…ありませんわ…。エースの方がもっともっと優しくて、かっこよくて、温かくて…うぅっ!遠回しに眼中にないって言われてそれで怒って八つ当たりなんて最悪ですわ」
相手にされなくて当たり前だよ、こんな嫌な女。何であんなこと言ってしまったんだろう。後悔が押し寄せてきて思わず手で顔を覆っていると、隣を歩いているマルコがポンポンと私の頭を撫でた。
「本当にエレナは優しいよい。エースの奴は幸せモンだなァ こんなに想ってくれる子がいて」
「そ、そう思いますの!?」
「ん?」
「エースは、エースはわたくしに好かれて迷惑じゃないんですの?」
本人に聞けよと思われる質問だろうがそれは無理だ。何故なら迷惑だなんて面と向かって言われた日にはいくら私が鋼のハートの持ち主であろうと一瞬で粉々に砕け散るからだ。私はドキドキとマルコの答えを待った。
「ハハッ!」
「ちょ、ちょっと!どうして笑うんですの!?」
人が真剣に悩んでるのになんて失礼なバナナだ!
「いや、お前ら二人あれだけそれらしい事言ったりしてたってのに全然お互い理解し合えてなくて面白くてよい」
「理解し合えてない…?わたくしとエースが?」
「ああ いや…まァおれがその答えを言っちゃ意味ねェんだがよい。心配しなくともエースはちゃんとお前の事が好きだよい」
「…わかっていますわ。でもエースの好きと私の好きは違いますもの…」
そればっかりはもうどうしようもない事なんだけどさ。もし貰い手がいなかったらエースが私を貰ってくれるって言ってたけど、もしかしたらあれもその場限りの言葉だったのかもしれないし。
「全くお前のその鈍感さには驚きを通り越して感心するよい」
「鈍感?何を言っていますのマルコったら。わたくしがこんなにも人の気持ちに聡明だから困ってるんですのに」
「(こっちが恥ずかしくなるぐらい分かりやすいエースの気持ちにも気づかない奴の何が聡明だよい…)」
「あ!マルコったら今失礼な事考えましたわね?可哀想な目でわたくしを見てましたわ!」
何かを諦めたような哀れみの目を向けられてマルコをキッと睨む。まぁこんな愚痴にも付き合ってもらってるのだからそんな事する資格は私にはないのだけど。
「変な所で鋭いねいお前さんは。ーーとにかくおれから言えることは一つ」
「…!」
「エースを信じることだよい」
「し、信じる…?」
「そうだ。答えを知りたきゃ信じる事が一番の近道だよい」
「わ…わかりましたわっ!マルコがそう言うなら…!」
一体何を信じればいいのかは不明だがこれは恋の師匠マルコからの有難い助言だ。そもそもエースを疑った事なんてないから信じることと言われてもピンとこないけれど私なりに今まで以上に信じることを頑張ってみよう。
まずは付いて来ないでなんて言ってしまった事を謝ることからだ。私はマルコと視線を合わせてコクンと頷くと宴会の間に残してきてしまったエースの元へと向かうのだった。