09
「わっ!美味しいっ…!」
どうも只今絶賛囚われの姫ポジ天竜人ことエレナです!
セニョールに連れられやって来たのはドンキホーテファミリーが勢揃いしている食卓の間。なんていうかここのファミリーは集団行動が多いよね。集団行動!絆!家族愛!みたいな。はるか昔(前世)の小学生時代を思い出すぜ。
しかし料理うめぇ…さすが元天竜人というべきか食に関しても抜かりがない。
「フッフッフッ 料理が口にあったようで何よりだ」
冒頭の私の一言を聞き逃さなかったモフピンクがお馴染みのフッフッフッを繰り出しながら笑う。マジでこのモフピンクは会話の最初に笑い声つけるのがテンプレなのかね。
「べ、別に料理に罪はないですからね!勘違いしないで下さいまし わたくしは決してあなたに心を開いたというわけではありませんですのよ!」
「貴様っ 若に向かって何たる口の聞き方…!!」
「フフフフフ よせグラディウス 気にしちゃいねェ」
「しかし若っ!」
若様親衛隊会長ことグラディウスが私への不満を露わにする。いや〜私どんだけ嫌われてんの。ここまで人に嫌われたの初めてなんだけどなんなら隙を見て殺されそうな勢いだよ。
そこらへんちゃんとしてよね監視役の人たち。
「そう熱くなるな 飼い猫の反抗期と思えばこのぐらい可愛いもんだ」
いや誰が飼い猫やねんフラミンゴ野郎。人間ですらねーじゃねぇか。
「べへへへ〜飼い猫!人間ですらねェ!」
「うるさいですわねばねば男!」
「バカめ!これはねばねばじゃなく"ベタベタ"だ!」
いやクソどうでもいい!私からしたらどっちも同じなんだよ納豆をねばねばかベタベタで言い争ってるくらいどっちでもいいわ!
「全く食事中に落ち着きのない娘ざますね」
「本当 うるさいし死ねばいいのに」
「きゃー辛辣!」
「ダメよシュガー そんなひどいこと言っちゃ。この子はまだ12歳なんだから」
ベ、ベビーちゃん!!なんて心優しい子!今の私きっとそんな優しい言葉投げかけられたらコロッと落ちちゃいそうなくらいには参ってるよ!
私はギィ、ギィと椅子を動かしベビーちゃんの隣に無理やり割り込んだ。
「わたくしこれからはベビーちゃんについて行きますわ」
「え、!わ、私が必要なの!?」
「はい!わたくしの唯一の癒しですわ」
「きゅん…!任せて エレナの為に私一生懸命役に立ってみせるわ!」
きらきらと目を輝かせながら私の手を両手で握って来たベビーちゃんにニコッと微笑み返す。
「何だか逃亡の手助けをしそうな感じの勢いだすやん!」
「オイオイ 見張るのはいいが逃すのは駄目だぞベビー5」
「逃したらそれこそ一大事だイーン!」
「逃す云々は勿論ありえんにせよ若も少々あの娘に甘すぎじゃぞ」
っておいハゲジジイ!余計な事言うんじゃねえ甘すぎで結構なんだよむしろもっと砂糖多めなぐらいの甘さでちょうどいいぐらいなんだかんな!
「まァまだ3日だ。これから徐々に慣らしていけばいい」
「回りくどいぞドフィ こんな小娘さっさと従順になるよう躾ければいいだけの話」
ぶっ!!!しゃ、喋った!ピーカさん喋ったよ。いやてか声たっか!それ地声なんだよね!?笑わないようにこの3日間訓練してたからポーカーフェイス貫けてるけど不意打ちでこんなん来たら私絶対笑ってる自信あるからな!
「フフフ おれは野蛮なやり方は好きじゃねェ。心配せずとも時が経てばそのうち従順になるさ」
いえいえ。どんなに時が経とうと私があなたに従順になる日はこないので残念ながら無駄な努力ですね。
一体何を根拠に私が従順になると。私がきゅるるん系従順乙女になるのは最愛のエースの前だけだ。あーん!もう既にメラメラ不足なんだけど本当どうしてくれんのモフピンクめ!
「おい小娘 ナイフの持ち方をどうにかしろ」
「?」
ええ、いきなりマナーとかの話してくるわけセニョールさんよ。さっきちょっと打ち解けたかなとか思ってたのに…。
「そんな持ち方じゃ万が一落とした時に危ねェだろうがよ」
純粋に心配してくれていたらしい。
や、優しいとこもあるじゃないか…!!
ごめんよ疑って。
セニョールに言われて改めてナイフを持つ自分の手を見てみると、まるで藁人形に釘をさす時のような手つきでナイフを持っていた。いやー危ない殺意殺意。
その後もまあまあ賑やかな食卓を囲みながらなんとか食事を終えた私はでは、といち早く席を立とうとしたところをモフピンクさんに止められた。
そしてあれよあれよと別室に連れて行かれる私。いや何ですかいきなり怖いんですけど。いよいよ私何かされちゃう系なんですかね。
私はポーカーフェイスを装いながらも内心心臓が太鼓の達人ばりの音を奏でるのをどうにか抑えるのに必死でしたとさ。