10
 
「……」

パタンと閉まったドアの音を聞いて私の心臓が更に激しい音を奏でる。完全に二人っきりの空間だ。悪のカリスマとか闇のブローカーとかヤバイ異名しかついてないモフピンクと。

美味しいご飯をたらふく食べて至福の昼寝タイムでも、と思っていたのに何なんだこのシュチュエーションは。グラディウスパイセンに私の態度について「気にしちゃいねェ」って言ってたよね?あの言葉は嘘だったの?本当はめちゃくちゃ怒ってたの?

「フフフ そう怯えるな。とって食いやしねェよ」

「な、なら何の用なんですの…?」

「あァ 実はお前にやってもらいたい事があってな」

…!や、やってもらいたい事!?
いやてか何そのめちゃくちゃ何か企んでますよ的な笑みは!絶対なんかやべーことやらせようとしてるだろ!?

「今からお前にはこの映像電伝虫を使って世界中に向かって演説を行ってもらう」

「……はい…?」

「フフフフッ!なァに心配するな お前はシナリオ通り事を運べばいいだけだ」

だめだ。このモフピンクさん何かとんでもないことしようとしてるわ。今やエースに攫われた天竜人として世界中に知れ渡ってしまっているこの私に演説をしろと?

私がドレスローザにいるなんて事がバレればすぐさま海兵たちが迎えに来てマリージョアに強制送還されてしまうではないか。

いやそもそも私をこの王宮に閉じ込めている事がバレればドフラミンゴ氏もヤバいんじゃ…?

「この演説にはお前を正式におれのファミリーに迎える事を意味する重要な役割がある」

「わたくしを、正式に…?」

いやちょ、正式にファミリーになるつもりなんてないんですけど!?主人公組が来たら即オサラバするつもり満々なんで間に合ってます。はい。

「聖地マリージョアでお前の帰りを待つ親。そして現在お前を捜索している政府関係者に向けて一言こう言えばいい」

「…!」

「ドンキホーテファミリーの一員になる もう放っておいてくれと…その一言で晴れてお前は完全におれ達の"家族"だ」

フフフフフフフッ!とそれはそれは愉快そうに笑っていらっしゃるが…おい待てなんだそのふざけた演説内容は!

確かにエースとの愛の逃避行時はもう追ってくんなとか思ってましたけど!確かに天竜人の私が一言そう言えばドンキホーテファミリー滞在も許されるのかもしれないけど!

私が嫌なんだよ!わかるかフラミンゴ。こんな肉食獣の巣みたいなとこで毎日怯えた生活を送るよりまだマリージョアの方がマシなんじゃないか…?いや、でも癒しのベビーちゃんいるし多分もう少しで主人公組くると思うし…

「懲りずにお前を探しているらしい"火拳"にもちょうどいい 解放してやれ」

「…!」

まだ探してくれてたんだ…!クソッ申し訳ない気持ちでいっぱいだけど嬉しい。もしかして私がいなくなってからずっと探してくれてたのかな。

でも解放か…。こればっかりは確かにモフピンクの言うとおりかもしれない。

「さァどうする 世界中に向けておれのファミリーになると誓うか…もしくは断って最悪の事態を招くか」

推定3mもある大男から見下ろされ究極の選択を迫られるとか前世私どんな悪い事したんだよ。いや記憶が正しければ至って普通の女子高生の筈なんだけどな?

しかもこのモフモフ選ばせてやるとか言ってYESかはいしか答えられないような難題出してくるし12歳に対して大人気なさすぎだし…。ふぇえん!このヤクザお兄さん怖いよう助けてドラえもん!

back|next
back