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エースがエレナを探しに街へ出て数分が経過した頃、先程までエレナ達が食事をしていたレストランの扉にはCLOSEというプレートがぶら下げられていた。

賑わっていたレストランに客はおらず、いるのは店主のみ。
店主は洗ったグラスを拭きながらバーカウンターの裏で目を閉じ眠っているエレナに目をやった。

すぐ側であの世界貴族と名高い天竜人が無防備にも眠っている。白ひげ海賊団の二番隊隊長である火拳のエースと一緒にいた所を見るにどうやら"天竜人が海賊に攫われた"という報道は事実らしい。

天竜人の誘拐事件などという神をも恐れぬ大事件は瞬く間に世界に知れ渡り、それと同時にとんでもない事実がもう一つ明らかになった。

天竜人を攫った海賊 ポートガス・D・エースは海賊王ゴールド・ロジャーの実の息子だったのだ。


その報道は世界を揺るがすには十分すぎる程のものだった。
一体なぜそんな大事件の張本人達がこの国にいるのか。店主が一人そんな事を考えていると突然店の扉が開いた。

「フフフフフッ!例のモンはここかァ?」

独特な笑い声と共に店内へ入ってくる大きな影。

「は…っ!?」

店主兼ドンキホーテファミリーの下っ端であるこの男はファミリーのボス・ドフラミンゴ本人がこんな港町までわざわざやって来た事に驚愕し、口をあんぐりと開けて固まった。

「おい 何をグズグズしてる。報告にあった女だ」

「は、こっこちらに!!」

店主はドフラミンゴの機嫌を損ねないように急いで足元で眠っているエレナをバーカウンターの裏から引っ張り出し、近くにあった椅子に座らせる。

それでも起きる気配のないエレナを暫く見つめ、ドフラミンゴはその小さな体を軽々と持ち上げた。


「フッフッフッ!よくやった 褒美は後で摂らせよう」

部下にその一言だけ告げるとドフラミンゴはエレナを片手にレストランを後にした。

ーーーーーーーーーーー

2年前インペルダウンに幽閉され公開処刑寸前だった"火拳のエース"。

政府が揉み消した為表沙汰に公にはなってはいないがエースの公開処刑が中止になったのには天竜人の力が大きく関係していたのだ。

海軍の全戦力を集め、エースの処刑に向けて念密に練られた計画があと一歩というところで白紙に戻った。

本来ならその先の情報は七武海とて分かり得ない所であるのだが元天竜人だったドフラミンゴは違う。

公開処刑寸前のエースと、同じ房に入れられていたジンベエの2人をインペルダウンから連れ出した事も

兄を助けようとインペルダウンへ潜り込み捕まった麦わらのルフィを友達だと言い監獄から出してやった事も

更にはシャボンディ諸島で奴隷だというエースとジンベエ二人を解放した事も。

その全てが一人の天竜人によるものだという情報は全てドフラミンゴの耳に入って来た。

聞けば聞くほど笑いがこみ上げてくるその内容にドフラミンゴのエレナへの興味は最高潮にまで達した。


その興味を唆られる対象が何の偶然か今目の前で呑気に寝ているとくれば自然と口角も上がる。
起きたらまずどんな反応をするのか。どんな目で、どんな表情でこちらを見るのか。

ドフラミンゴは新しいオモチャを手に入れたとばかりに笑みを深めると早速王宮へ向かうのだった。

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