009
「お前ら……一緒に戦ってくれるのか……!?な…何で…」
「だって敵は大勢いるんだろ?」
「恐ェって顔に書いてあるぜ」
「君一人で敵う相手じゃない」
「お!!おれが恐がってるだと!?バカいえ!!大勢だろうと敵わなかろとおれは平気だ!!!なぜならおれは勇敢なる海の戦士、キャプテン・ウソップだからだ!!!」
一人で何とかしてみせる、そう熱り立って豪語したウソップだがその足は言葉とは裏腹にガクガクと震えていた。
「あっ!!……!!くく…くそっ!!くそっ!!見世物じゃねェぞ!!相手はC・クロの海賊団。恐ェもんは恐ェんだ!!!それがどうした!!おれは同情なら受ける気はねェ!!てめェら帰れ!!帰れ帰れ!!」
「落ち着いて。同情なんてしてない…そうだろ?ルフィ、ゾロ」
「ああ。別に笑ってやしねェだろ?立派だと思うから手を貸すんだ」
「ウィルの言う通りだ!同情なんかで命懸けるか!」
「ここにいる奴らは皆お前のひたむきな心意気に動かされたんだ。ルフィの言う通り、少なくとも同情なんかで命など懸けはしない」
ゾロとルフィ、そしてウィルの思ってもみなかった言葉にウソップが再び眼に涙を溜める。表情こそ変わりはしないものの、ウィルはその様子を暖かな瞳で見守った。
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「この海岸から奴らは攻めてくる。だがここから村へ入るルートはこの坂道1本だけだ。あとは絶壁!!つまりこの坂道を死守できれば村が襲われる事はねェ!!」
「簡単そうじゃない!あ!!ならウィルがやっつけちゃえばもっと簡単じゃない?ほら、あんた強いんでしょ?」
岩に寄りかかり、瞳を閉じながら話を聞いていたウィルはナミの提案に閉じられたブルーの双眸をゆっくりと開いた。
「悪いがおれは手助けはしない」
ほんの一瞬、ウィルの纏う空気が変わった。ウィルは眉ひとつ動かさず、跳ね除ける様な声色でそう答える。我ながら良い提案だと思ったナミは予想外の返答に納得がいく筈もなく、ウィルに問い返した。
「なんで!?あんたがパパッと敵をやつければ一発で終わるじゃない!私達がやるより簡単にこの村も、お嬢様も助けられる!」
「………それが駄目なの、わからない?」
「…っ!!」
遠くを見つめていた瞳が自分に向けられた事にナミが息を飲む。仲間になったとは言え、冷酷無慈悲と名高い太陽と月を追う狼という二つ名を持つ彼が感情のない声色でそう言えば、やはり恐怖心を抱いてしまうのだ。
「ルフィ、この件は任せる。いいな…?」
「おう!ウィルがいなくてもおれ達だけで十分だ!!」
「望むところだ。全員おれが叩っ斬ってやる」
「もうっなんなのよあんた達!意味わからない!なんでもいいけどお宝は私のものよ!」
いまいち納得のいかないナミだったが最終的には彼らの意見に従い、各々は準備に取り掛かった。そして、夜が明けるーー